クラウドコンピューティング市場が広がりを見せてきている。
今までクラウドには適用出来ない、と言われていたアプリケーション領域が少しずつサポートされるようになってきており、今回のAmazonの発表は、その中でも特に難しいとされていたスーパーコンピュータ級ののHPC(High Performance Computing)を提供するサービスを開始する、という内容である。
サービスの内容は、Cluster Computing Instances、とよばれ、クラウドコンピューティングに要求される高速な分散処理を実現する為に高速なプロセッサーを採用している、と報告されている。キーポイントは、従来プロセッサー同士を接続するのに使用されていたInfinibandや通常のネットワークを、10GBpsの高速ネットワーク回線に置き換えた事。
もう一つユニークなのは、こういったHPCに必要になる大量のデータをクラウドの環境に移す為にインターネットを経由したデータのアップロードではなく、ハードディスクを直接郵送する、という方法を利用して、Amazonのクラウド上に移す為に、という方法をとっている、という事を。意外にレガシーな手法の方が効果的である、という逆転の発想である。
Amazonが採用しているプロセッサーは、Intel Xeon X5570であり、最小構成は2台からスタートできる。Amazonは自社のクラウド上での環境で使用するプロセッサーモデルを開示する事はほとんど無いが、HPCにおけるLinux Cluster OSの最適化を可能にするために公表している、としている。
このサービスは、Amazon Web ServicesのVirginia州、Ashburn市のデータセンターでのみサポートされている、との事。
最近は科学技術計算だけではなく、BPA(Business Processing Analysis)や、動画の編集などにも利用されるケースが急増しており、こういった広がりとともにクラウド上でのHPCのユースケースが増えてくるもの、と予測される。
Cluster Computing Instancesの価格構成は次の通り
一時間あたり、$1.60 で、次の通りサービスが提供される。
- 23 GB のメモリ
- 33.5 EC2 演算ユニット (2台のIntel Xeon X5570)
- 1690 GB ストレージ
- 64ビットプラットホーム
- 10GBps ネットワーク回線
ユーザからの評判もかなりの良いようである。
テネシー州にある、Oak Ridge National LaboratoriesのRob Gillen氏によると、自分の部門内のクラスターシステムを $208/hr で置き換える事ができる、と報告している。