2011年6月15日水曜日

RightScaleが打ち出すmyCloud戦略:プライベートクラウドをUSBドライブに

New Yorkで開催されたCloud Expo 2011というイベントに同期して、RightScale社が4回目に当たる、自社のユーザkんファレンスを並行開催した。

登録者数は700名近く、一スタートアップベンダとしては独自のイベントをそれも無償で開催する、という動きはこの会社のある意味での勢いを示すものである、と言える。いくつかキーとなる発表が行われたが、以外と注目を浴び無かったが、今後市場に対して大きなインパクトを及ぼす、と想定されるものとして、myCloudというコンセプトの発表である。

myCloudは、簡単に説明すると、プライベートクラウドを簡単にインストール、稼働、管理できる事が出来るソフトウェアバンドルの事を指す。

さらに、このプライベートクラウドをRightScaleを通してパブリッククラウドとの連携も自動的に行い、ハイブリッドクラウド環境までも作る、という事まで出来てしまう。

インストールの後、簡単な環境設定を行い、実際に稼働するまでに、2、3時間で出来てしまう、という画期的な早さである。最終的にはRightScaleのコンソール上に、指定のパブリッククラウド(AWS EC2等)と自分のマシン上のプライベートクラウドの両方が見えるわけである。

今日のクラウド市場は、パブリッククラウドのリソースが数多く登場しているのに比べて、プライベートクラウドの数が絶対的に少ない、という状況である。色々と要因はあるが、プライベートクラウドを構築する為に必要なコンポーネントの数が多い、という事と、構築する方法が複雑である、というのが主たる原因である、と言える。

さらに、プライベートクラウドとパブリッククラウドを連携させ、ハイブリッド環境を構築するとなると、さらに状況は複雑になり、すべてをソリューションとして提供できるSI/コンサルもそんなに存在しないのが現状である。

このmyCloudは、このステップを数時間で簡単に構築する事が出来る、という点で画期的であり、プライベートクラウド環境の構築に拍車をかけることになる、と期待されている。

提供方法は現在RightScaleを通してダウンロードする方法しか無いが、夏までには、USBキーでの配布を行う事が予定されている。USBキー一個でプライベートクラウドを作る時代になる訳である。

プライベートクラウドのコンポーネントは大きく分けて3つによって構成される。
  1. ハイパーバイザー = KVM, Xen Server
  2. クラウドAPI = Cloud.com(CloudStack), Eucalyptus
  3. マルチクラウド管理ダッシュボード = RightScale

myCloudの開発には上記のベンダーの協業作業があり、一般的には非常に複雑になる環境設定等を極力単純化し、短時間でクラウド環境を作り上げ、運用が開始できる様にしたい、という狙いがある。

ユーザにとって、「クラウドを作る事」が目的であってはならない、というのがコンセプトの根底にある。クラウドと作ってから、「クラウドを利用する」事が重要な目的であって、その為にクラウド構築に不必要な時間をかけるのは全く無意味である、というのが主張である。

さらに、「クラウドを利用する」事の延長線上に、クラウド上で利用するアプリケーションを構築する、という事がむしろユーザにとって重要な要件であり、目的である、という事が言える。

プライベートクラウドの構築、ハイブリッド化にかける時間を極力少なくし、その上の業務を構築する為にエネルギーをかける、という事が重要だ、という事である。

昨今のSIの動きとして、プライベートクラウド構築を一つのSI/コンサルメニューとして打ち出している会社が多く登場しているが、myCloudの登場でこういったコンサル事業の必要性がなくなる、という事が想定される。


myCloudは、無償版があり、それが当面配布対象となる。
日本でも出来るだけ早くこれをUSBキー、もしくはダウンロード、という形で市場に配布する様にする計画である。

さらに、無償版の機能を拡張したものとして、Standard版、Enterprise版があり、サーバテンプレートの数、カスタマイゼーションの方法等、用途が広がっている。

こういう発表を見ると、時代の変化のスピードが非常に早くなっている、という事を実感する。
特に、従来のIT技法に頼り切っている考え方ではこのスピードにはついていけない、という事を切に感じる毎日である。

クラウドとは言え、これは大きなパラダイムシフトそのものであり、是非その波についていきたいものである。