2010年10月29日金曜日

クラウドは本当にセキュリティ面で心配なのか? 従来のOn-Premiseと比較してそんなに心配なのか?統計による分析

クラウドの大きな問題はセキュリティが無い事である、という意見が多く登場している。
インターネットが登場した時もそうであったし、その昔はPCが登場し、分散コンピューティングが広がっていった時も同じ様な懸念が登場したが、いつの間にかそういう議論があまり語られなくなり普及していった、という歴史がある。

楽観的な意見が持つ人たちの間では、クラウドコンピューティングも同じパターンでセキュリティに対する懸念がいつの間にか消えてなくなる、と思う人が多い様である。

US Department of Health and Human Services (HHS)と呼ばれる政府の機関が発行した昨年の医療業界におけるネットワークに対する攻撃の内、情報漏洩等の実被害者が500人以上に及ぶ事件の件数が166件で、合計4,905,768人の患者が英鏡を受けている、という内容が報告されている。 

このレポートを受けて、PHIPrivacy.netが興味深い分析を行っていて、医療業界の様なセキュリティ要求の高い、規制の厳しい業界においてもローカルに管理されるデータはかなりの頻度で盗まれている、という状況を説明している。

このレポートが主張しているのは、上記の医療業界での状況と比較して、Salesforce.comMicrosoft BPOSAmazonGoogle AppsQuest OnDemandのようなパブリッククラウドサービスの業界で年間に166回もの事件が起きるのだろうか? という事である。

パブリッククラウドで問題が多発しないのは、次の様ないくつかの理由がある、と説明されている。

・  データセンタのセキュリティの基準がそもそも高い事:  大抵のデータセンタは、SAS 70 Type I もしくは Type II というセキュリティ規格、さらに ISO/IEC 27001:2005 と言った規格に準拠した運営を行っているからである。企業内のデータセンタはそこまで投資を行う事は実際に少ないのが現実である。
・  業務の明確な分離:  データセンタ事業者はそのテナントの従業員では無いので、何所にどのように貴重なデータが補完されているのかを知る事が基本的にできない。
・  パブリッククラウドは複数のテナントを抱えているため、万が一、ハードディスクごと盗む事に成功したとしても、そのディスクの中は様々な顧客の情報の断片が、ある特殊なアプリケーションのフォーマットで記録されて、データを解析するのはほぼ不可能である。
・  企業の従業員の持つラップトップやモバイルデバイスは、クラウド化される場合、デバイス内にデータを殆ど補完しないモデルが採用される。 デバイスが盗まれても、データが盗まれる事がない。 
・  どのパブリッククラウド事業者のサイトをみても、セキュリティを最大の要件としてる。データの隔離、ログ管理、アクセス管理、等セキュリティを重視するが故にかなりの施策が施されている。

企業の中におけるデータセンタは、社内内部の人間が使う事が基本になっているため、セキュリティの強化とは言っても、基本的に社内規則に準拠している人間が利用する事を前提としたセキュリティになっているのが通常である。 事業としての判断で必要以上のセキュリティに対する投資は必要ない、と考えるのも通常である、と言える。  このような環境において、企業は何故企業内のデータセンタが安全だ、と主張出来るかというと、基本的に社内ユーザは信用出来る、という安心感があるからだ、と言える。  社外の人間がアクセスするとなると、急にセキュリティが厳しくなるのはそのためである。 

一見、パブリッククラウドは不特定多数の人間がアクセスしている環境の様に思えるが、実は個々の利用契約に基づいてサービスを利用している特定の利用者の集まりである。 個々のユーザは論理的に特定のコンピューティングスペースを専有し、データ、アプリケーションの管理をクラウド上で行っているが、このクラウドを運用する会社が採用するセキュリティは、複数の企業が入り込んでコンピューティングリソースを利用する環境に必要十分なセキュリティを採用している訳であり、結果的に企業内のデータセンタと比較して格段に厳しいセキュリティは基準が採用される必要があり、そのように運用しているのが現状である。 

パブリッククラウド上の各テナント間の論理的な境界線に問題がある、というのなら、それは少し別な問題である。それは通常仮想化領域で管理されるパーティションの議論であって、その技術的な限界や、セキュリティの懸念を議論するのであれば、それは仮想化という技術自体を問題視する事であり、パブリッククラウドの問題とは別次元で議論されるべきである。  これをパブリッククラウドのセキュリティの問題と混同してしまうと、的の外れた結論に達する危険性があると思う。

2010年10月27日水曜日

MicrosoftからRay Ozzie氏が離れるまでの経緯: 批判的な分析の代表例

Ray Ozzie's leaving Microsoft: What took him so long?
Microsoftに関する記事、特にChief Software Architectという肩書きをもった、いわゆるMicrosoft社の技術陣の最高峰に位置付けられていたRay Ozzie氏が同社を離れた事に対する分析記事が
多く登場している。
 
基本的にはこういう記事は個人的な主観が混ざってしまう傾向が高いため、あまりブログに取り上げない様にしているが、今回の事象に関しては、クラウド市場というものがどういうものなのかを理解する上で興味深い、と感じており、いくつかの記事で登場したコメントについて分析してみたいと思う。

まずは、Ray Ozzie氏のMicrosoftに対するクラウド時代への変換の必要性を訴えた、"The Internet Services Disruption." と呼ばれる社員全員に向けたメッセージが同氏のMicrosoftに対する意気込みを示す最もも有効なものとして見る事が出来る。これは、RayがBill Gatesに誘われてMicrosoftに入社した2005年の3年後の2008年の10月に社員全員に送られたメールである。従来のクライアントサーバーベースのソフトウェアライセンス事業のモデルから、クラウド型のサービス事業への変化が必要である、という事を切々と説明している内容である。  改めて読み返すにあたり、よくコンセプトがまとめられている事に感心すると同時に、Microsoft社が結果的にそれを十分に吸収する事ができなかった、という印象を受けざるを得ない。 

関係者、特にMicrosoftに近い人間の意見によると、この時点で既にRayはMicrosoftにおける自分の出来る事の限界を感じ始めていたのでは、という人もいる。 

Ray Ozzie氏は、元々はLotus Notesという製品を開発した人間である。クライアントPCとサーバーとの間のデータやプロセスの同期を保証する機能が非常に優れていて、そのコンセプトは非常に評価される一方、実ビジネスにおいては必ずしもそのコンセプトが活かされてはいなかった、と言われている。最終的にはIBMに買収され、同社のITソリューション事業の一部に組み込まれている。

後に、Ray Ozzie氏は、Groove社という会社を起こしており、これが2005年にMicrosoftに買収されている。 Grooveは当初はMicrosoft Officeの一機能として統合され、後に SharePoint Services の機能に組み込まれている。 SharePointの今日の姿はOfficeと並び、企業向けの情報管理ソリューションとして販売されているが、必ずしも主力製品としての地位は獲得しているとは言えない。

Ray Ozzieが上記のクラウドサービスのコンセプトを説明したメッセージを社内に発信したのはこの後である。 このメッセージを最も具現化したのは、Microsoftのクラウド戦略である、Azureである。 2008年のPDCにおいては、Ray本人がAzureの事を、「独自のAPIを持つ、クラウドベースのOS」、と定義している。 この約一年後の2009年の12月、Microsoft社は大幅なレイオフを含めた組織改正を行い、Azureの開発はRayから別部門に移行し、当初のコンセプトとは程遠い姿で出荷されている。

あまり知られていないが、Rayが取りまとめたもう一つの製品があり、Live Meshと呼ばれている。 この製品は、クラウド上のアプリケーションやデータの統合を行う先進的な機能を有していたが、最終的にはWindows Live Syncという製品として市場に投入されたが、機能がかなり削られている結果となった。

もうひとつの製品は、Live Labsと呼ばれる。 Rayが密かに温めていた戦略的な製品で、2006年に発表されて以来、Googleに対向し得るインターネットアプリケーションのRADツールとして評価された。  発表の2週間後、Live Labsのチームは解散し、Bingグループに統合され、Live Labsの開発は責任者は退社している。

一年後、RayはFuture Social Experiences (Fuse) Labsと呼ばれるアプリケーションやサービスの開発、運用プラットホームをプロジェクトとして発足している。 このプロジェクトは最終的に、Facebookのアプリであるdocs.comという名で発表されている。  

このように、Ray Ozzie氏のMicrosoftでのキャリアはかなり山あり谷ありであった状況が見えてくる。

Ray OzzieとCEOであるSteve Ballmer氏両人がパネルディスカッションに登場するイベントが恐らくRayのMicrosoftにおける心境を最もよく表しているのではないか、と思う。
今年の6月に開催された、D8 conferenceと呼ばれるコンファレンスでの事であるが、いつもの強気なイメージのSteve Ballmerとは対象的に、Ray Ozzie氏が非常に大人しく、もの静かに質問に対して回答をしている姿が非常に印象的である。 パネルディスカッション中に度々指摘されているが、両者のクラウドコンピューティングに対する考え方の違いがかなり如実に現れており、何とも妙な不安感を感じざるを得ない。Ray氏のクラウドに対する理解が非常に的確であるのに対して、Steve氏のクラウドコンセプトはあくまでも既存のPC、サーバインフラを補完するものとして位置付けている、という点、明らかにその違いを感じ取る事が出来る。
 

クラウドコンピューティングのコンセプトは、単なる技術ではなく、ビジネスのやり方、ITの取り組み方を大きく換えるパラダイムシフトである、という事はよく議論されているが、具体的にどういう変化なのかはまだよく見えていない、と言われる。 

上記のMicrosoftにおける、今日の収益を大きく支えるレガシーのビジネスモデルと、新しい時代のクラウドビジネスモデルとの間の違いは、結果的に大きな溝として浮き上がり、最終的にRay Ozzieの退社、という結果を生む事になった、と言える。 つまり、Microsoftの方向性は、既存のレガシー事業を守る形で、クラウドを補完技術として採用する、という事である。  

Azureの未来も、これで大きく当初のコンセプトから離れ、Microsoftの資産である、.NETを継承する独自のクラウドインフラになる事が想像される。一種のプライベートクラウド化、というところだろうか。 これはデスクトップ市場を継続的にWindowsで独占し続ける事ができれば現実解として可能性はあるが、クラウドがますます浸透する今日、果たして企業は自社のアプリケーションやデータの資産を特定ののOS上で管理する必要性を感じるのだろうか、Microsoftの選んだ戦略に対しては、大きな疑問が残る。 


2010年10月26日火曜日

FacebookとZyngaの関係: パートナーでもあり、敵でもある。

Facebookは世界最大にソーシャルネットワーキングサイトである、という面を持っている一方、最近話題になっているのは、毎月2億人以上の人間が参加するオンラインゲームアーケードの運用サイト、という面である。

San Francisco市に本社を置くZynga社は、FarmvilleやMafia Warsといった、Facebook向けのゲームを開発する最大のベンダーである。 急成長を遂げた現在、自社のグッズの販売により年商$5億ドルを出す勢いである。通常ゲームは無償に提供されるが、ゲームの進行を早める(先のステージに進める、等)ためには、有償のグッズを購入する必要がでてくる。

Facebook社は、早くからこの動向に目をつけ、次の様な施策をとっている。
1) 今年のはじめ、Zyngaをはじめとしたアプリケーションベンダーに対して、自由にユーザに対するのNotificationを発信する事を禁じた。ユーザにとって、膨大な量のゲーム系の宣伝広告が減ったと評価されたが、さらにFacebookにとっては、ゲーム系のベンダーが宣伝の為にFacebookの広告スペースを購入する傾向を高める結果になり、集積増にもつながった。
2) Facebook Creditsという同社の独自通貨を自社パートナーに対して使用する事を要求した。Zynga社も反論をしていたが、結果的に両社の間に5年間の契約を締結する事となった。

表向きにはパートナー関係にある、と見られているプラットホームベンダーとその上のアプリケーションベンダー、表向きにはゲームベンダーが脚光を浴びている様にも見えながらも、プラットホームベンダーがかなりビジネス面でのコントロールをしている、という現実が垣間見える。  

しかしながら、これはFacebookに始まった事ではなく、Amazon、Google、さらにMicrosoftが行っているビジネスと同じである、という事が出来る。 プラットホーム事業の最大のメリットは、そのプラットホーム上のアクセスをMonetize、つまりお金に換える事が出来る、という特権を持っている、という点である。

Digital Realty Trustが提供するコロケーションスペース: そのテナント状況を分析、意外な事実を発見

Digital Realty Trust社の2009年度の10-Kレポートをみると、テナントのリストと、各社がリースしているデータセンタースペースとそれぞれの価格を知る事が出来る。

image

上記がトップ20社のリストである。 

下記の点が分析される。

1) 上位3社、Savvis、Equinix、Qwestは、DRT社のデータセンタスペースの販社であり、DRT社のリースしているデータセンタスペース全体24.8%の面積をリースし、収益の18.9%に寄与している。

2) JPMorgan Chase、Morgan Stanley、HSBCの金融3社は、総面積の2.8%を占め、売上げの7.1%に寄与している。売上への貢献度が高いのは、リースしている物件が都市部に集中しているため、と想定される。

3) Googleはトップ20社には含まれていないが、Microsoft、Yahoo、Facebookはそれぞれ数パーセントと程度の状況である。 Facebookのリース料は全体の4位であるのに対して、リースしている面積が1.1%と比較的少ないのが特徴的である。恐らくかなり集約度の高いデータセンタを採用している、と想定されており、各テナントの状況を単ににリースしている面積だけで評価するのは誤解を産む可能性がある、と考えられる。

これらの数字の重要な事は、データセンタスペースの用途によって、様々な価格帯の選択があるという事である。また、業界によって、リースするデータセンタスペースの面積あたりの単価が比較的近い、という事も言える。 

モバイルとクラウドが2015年までにIT市場を独占: 最も大きな課題は稼動率にあり、と断言される理由

IBMは、Tech Trends Surveyと呼ばれる、同社のIBM developersWorksというグループが行った87ヶ国、2000人を対象としたオンラインサーベイを行っている。目的は、IT市場の今後の動向を見極めるための調査、と位置付けられている。 

IBM Survey: IT Professionals Predict Mobile and Cloud Technologies Will Dominate Enterprise Computing By 2015
調査によると、回答したIT プロフェッショナルの半数以上、55%が、iPhoneやAndroidをはじめ、iPadやPlaybookといったタブレットデバイスといったモバイルソフトウェアプラットホームが従来のアプリケーション開発の規模を超える、と予測している、という結果が明らかになった。

これは、アプリケーション開発環境が、Agileで、競合の激しい市場に変化する、という事も予測されている。上記の表によると、"Not Sure(よく分からない)"と回答しているのがわずか18%であり、そういう面でもかなりモバイルソフトウェア開発環境が広がっていく、という認識が確かなものである、という事が伺える。

モバイル環境の開発環境の大きな特徴は、常にサービスと接続出来るインフラを維持する事にある。 

Foursquare、と呼ばれるソーシャルネットワークサービスが、先週の月曜日に不明の技術的な問題により11時間の間停止していた、という事が報道されている。 また、最大手のFacebookでさえも2.5時間の停止、という過去4年間で最も長い障害を経験している。

これらの障害は、モバイルアプリケーションにとっては従来のPCベースのネットワークモデルと比較しても深刻な問題として捉えられる。 モバイルデバイスは常に接続している事がベースとなっているので、アプリケーションとしては、こういった障害時の対策をどの様にとるか、によって大きく差がでてくる、という予測が出来る。

不安定なネットワークインフラであるだけに、障害時の対策を考慮したアプリケーション開発戦略を練る事が重要になってくる、という事である。

調査レポートのサイトであるはここ

2010年10月8日金曜日

MicrosoftがAdobeを買収するかもしれない、という噂: その目的には共通の敵の存在

New York Times発、GigaOm経由で登場した記事であるが、Microsoft CEO の Steve Ballmer氏がAdobe CEO のShantanu Narayen氏と会い、秘かに合併の可能性について議論をした、との噂が業界での飛び交っている。

一体どういう事になったらこういう噂になるのかがなかなか理解できないが、両社はこのような話題があった事を否定している。 

ただ、噂の根源は、過去に同様の議論があった経緯がある事、その際には独占禁止法に抵触する恐れがあったために断念をした、という結果になった、という事である。

今回はその恐れがないのか、この噂が発信されてからというもの、Adobeの株価が11.5%、と急上昇している。 

両社は異なるビジネスモデルを進める会社同士ではあるが、競合する製品技術もいくつかある。 その代表は、MicrosoftのSilverlightとAdobeのFlashである。 また、AdobeのAcrobat・PDF仕様に対向する規格を計画している、という情報もある。  

ただそれよりも大きいのは、両社が共通に抱える敵、Apple社である。  
両社が行った会談の中心は、Appleに対してどの様に対向すべきか、という点だっただろう、という予測は多い。 Apple社がFlashを頑なに採用しない事、iOSがMicrosoftのWindows Phone OSの市場をドンドン攻め込んでいる、という状況は、両社にとって事業収益に大きく影響を及ぼす問題である。 

Appleの層資産額がMicrosoftを超えてしまった以上、もう過去の悩みであった独占禁止法にに触れるという悩みはなくなっている事は確か。

ちなみに、Microsoftの現在保有しているキャッシュは約$360億ドル。 一方、Adobeの現在のマーケットキャップは約 $150億ドルとされているため、決して安い買い物ではない、と言える。

Appleに対向するためにMicrosoftがAdobeを買収するかもしれない、という噂がでてくる事自体、数年前では全く想像もつかなかった事態であるが、インターネットの時代からクラウドの時代、PCの時代からスマートフォンの時代と、移行のスピードの早さには驚くばかりである。

2010年10月7日木曜日

北米でのManaged Hosting Providersの株価が好調: クラウド事業のモデルが評価

北米でのManaged Hosting Providersの3Q/2010の株価が好調である。  

Managed Hosting Providersという業種は、主として企業のIT資産(ハードウェア、ネットワークも含む)を自社のデータセンターで管理し、IT全体の運用、管理をサービスとして提供するビジネスである。コロケーション事業と異なり、ネットワーク、さらにOS、仮想化レイヤー、基幹業務アプリケーションも含めた資産の管理運用を行う事がポイント。

MHP業界で最も株価の伸びを見せたのは、Savvis Communications社(SVVS)、Rackspace Hosting社(RAX)である。  両社共に3Qの期間で40%の株価の伸び、という驚くべき数字を出している。これを追って、Terremark Worldwide社(TRMK)の32%、Navisite社(NAVI)の27%、と総じて25%以上の伸びを見せている。

MHPという、ある意味では非常に地味なIT運用事業が何故ここまで投資家に人気があるのか? 

企業がIT資産のセキュリティやコンプライアンスに大きな関心を寄せる中、長年その2点に関する投資を行ってきたMHP事業社に対して、企業が改めて積極的なアウトソースを活発化させている、というのが現状のようである。 合わせて、クラウドコンピューティングサービスも同様のセキュリティレベルで提供できる、というビジネスモデルが大きく評価されている、と考えられる。 

最近の動きとして注目されるのは、CoreSite Realty社(COR)というデータセンター専門のREIT事業社がIPOした、という事である。 同業の公開企業である、Digital Realty Trust社(DLR)とDuPont Fabros(DFT)社と並んで、REIT事業社は3社目になる。 

下記が、Data Center Knowledge社がまとめた、3Q/2010の関連企業の株価動向である。
この時期のDow Jones の平均株価は8%上昇、NASDAQ市場は12%の上昇を見せているので、MHPベンダーは全体的にかなり顕著な伸びを示している、という事が言える。

各社の伸びを、2010の頭からの比較を示しているのが次の表である。 
CDNの大手、Akamai社を筆頭に、MHPベンダーは、50%以上の伸びを示しているので、MHP業界の成長は、3Q/2010に限らず、長期的な視野でも伸びを示しており、今後の成長も期待出来る、と考えられる。

日本では長年、SI事業社が企業向けのIT資産を構築、運用する文化が育ってきている。 特にに基幹業務になると、SI事業社が中心になって企業向けの上流コンサルティングを始め、システム構築、運用、等の業務を提供し、北米でのMHPにかなり近い内容のサービスを顧客に提供している、と解釈する事が出来る。 

MHPの大きなポイントは、データセンターを運用し、顧客のIT資産をそこで運用する事に特化したサービスを提供している事である。広大な土地のあるアメリカでアウトソース事業が育ち、逆に土地の非常に少ない日本(特に東京)ではオンサイトのIT資産運用が中心になっている、というのは、考えてもみれば非常に不思議な状況である。

その鍵は、MHPベンダーがかなり早い段階からセキュリティやコンプライアンスを意識した運用サービスを提供できるインフラを構築し、顧客企業に対してそのメリットを明確に示してきた、という事にある、と分析出来る。  要するに、経済的なメリットは当然ながらも、さらに顧客との間に信頼関係があるからこそ、アプリケーションも含めたIT資産のアウトソース出来る、という事ではないか、と考えられる。

このように顧客との信頼関係を非常に重要視するビジネスモデルが、クラウドコンピューティングビジネスを始める、というのは考えようによっては非常に魅力的なサービスになりうる。クラウドコンピューティングの問題とされている、プライバシー、セキュリティへの懸念がこういった信用関係をとおして払拭出来る可能性があるためである。  

現に、Rackspace Hosting社は、クラウドコンピューティング市場においてはAmazon Web Serviceと並ぶ規模に成長しており、明らかにAWSと異なる顧客層を確保している。 

このモデルは、セキュリティやプライバシーの確保を重視し、尚且つ顧客との信頼関係を重視する日本企業にとっては非常に参考になるビジネスモデルであり、日本ではクラウドコンピューティング事業を伸ばす大きな要因になる可能性が高い、と思うところである。 

2010年10月6日水曜日

VC業界が元気を取り戻す理由

最近のVC活動が活発になってきている、という話題。

要因は、M&AやIPOの案件が増えてきている、という事のようである。 NVCA(National Venture Capital Association)という呼ばれる団体の報告によると、104件のM&A、さらに14件ものIPOが2010年の3Qの間に起きた、との事で、今後もこの傾向は続く、と予測している。

たしかに、最近の案件では、3PARBlade Technologies等の買収など、戦略的な要素の高い案件が多く登場している。M&A案件が全部の内、金額を公開しているのは27社であるが、その合計は 約$38.4億ドル、さらに感心するのは、14件のIPOは合計 $12.5億ドル、一社平均 $8920万ドル、という金額である。  


下記がさらにこのレポートが報告している。内容である。

・  14件のIPOの内、IT業界での案件は8件であり、合計 $7.5億ドルになる。最大の案件は、GreenDot Corp. のIPOで、総額$1.64億ドルにのぼる。

・  M&A案件全104件の内、ITセクターの案件は82件、合計金額は $10億ドルにのぼる。

・  インターネット、コンピュータソフトウエアが一番比重が大きい技術を分野であり、各々32件、33件。

・  買収金額が公開されている27件のM&A案件の内、5件は元の投資額の10倍以上の買収額、4件が投資額の4倍、7件は投資額を下回る投資額となった。

2004〜2007年の頃のM&Aの勢いにはまだ達していないが、2008〜2009年の急激な落ち込みの頃と比べたらかなり回復している、という事ができる。

この傾向を押している要因として、昨今のクラウドコンピューティングの成長が大きく注目される。各社のクラウド戦略が激しくなる状況を中、大手IT企業、Oracle、Google、VMWare、HP、Dell等が競って買収厚生をかけている状況はよく見えてきている。逆にクラウド戦略をなんらかの形で持っていなければ買収の対象になり得ない、と思えるくらいである。

2010年10月2日土曜日

AWS初のクラウド事業投資、ストレージアプライアンス企業:Cirtas => その裏にある戦略とは

Cirtas社は、San Jose市に本社を置くストレージ事業者である。

今回発表した新製品は BlueJet Cloud Storage Controller と呼ばれる、エンタプライズ市場向けのクラウドストレージアプライアンス製品。  

もう一つ、同時に発表したのは、同社がNEA、Lightspeed Venture Partners、Amazonの3社から合計 $1000万ドルの投資を受けた、という事である。最も興味深いのはAmazonにとって、クラウドベンダーに投資した初めての案件である、という事。

さて、製品の方であるが、Bluejet Cloud Storage Controller はエンタプライズが現在抱えているパブリック、プライベート、ハイブリッドの3つのインフラの統合という問題を解決するためのストレージ製品として位置づけられており、競争の激しい市場にまた一社加わる事になる。 

Cirtas社の製品の最も大きな特長は、複数クラウドを常に監視し、データ転送速度、セキュリティ、許容量、等を比較した上で最適なクラウドストレージプラットホームを選択、データを動的に移動させる機能を自動化している。この最適化のために、製品はアプライアンス内部でクラウド間のデータを移動させるためのストレージアレイと、各クラウドの状況を監視するダッシュボードを装備している。 (下記の図はダッシュボードの画面)

cirtas

エンタプライズにおいては、ローカルストレージを運用管理するのと同じ様にクラウドストレージも使いたい、というニーズがある事に着目し、製品はデザインを行っている。 アプライアンスの内部構造的なとして、RAM、SSD、HDDストレージもアレイを多重化装備し、さらにクラウドと直接接続するためのゲートウェイ、さらにWAN最適化の機能をサポートしている。


下記が製品のアーキテクチャ図である。

cirtas


さて、もう一つの関心は、何故こんな会社にAmazonが投資をしたのか、という事である。 自社でVirtual Private Cloudサービスも提供、エンタプライズ向けのソリューションを強化している中、敢えてこういう会社に投資をする理由として次のような事が分析される。


1) VPCを適用するにしても、クラウドのストレージを管理する機能は社内のIT部門の管理下に置きたい。 そのため、何ら家の形でのアプリアンスが必要であり、Amazonとしてはそれを推奨するソリューションが必要になってきた。この辺の市場がどの様に成長するかはAmazonにとってまだ不確定な市場なので、買収ではなく、VCとの共同投資という範疇に留めている可能性あり。


2) 企業内のプライベートクラウド市場は、VMWare、Oracle、IBM等の大手ITベンダーがSIソリューションを主体として提供するビジネスモデルである。こういう市場に、Amazonが段々と入りにくくなってきている、という事を懸念している可能性が大きい。Cirtas社のようなアプライアンスという製品をもつハードウェアベンダーと組む事により、SIソリューションモデルの中にAmazonのサービスを、SIが導入しやすい形式で提供する事が必要だ、とAmazonが認識してる可能性あり。


3) SMB、Web2.0市場は、Amazon Web Servicesを大きく支えているが、今後の市場予測では、クラウドの市場はエンタプライズ系にドンドンとシフトすると共にSMB、Web2.0企業からの売上マージンが薄くなってくることが予測されている。Amazonとしては、従来の顧客層に依存したビジネスモデルを継続する事に大きな懸念を感じているのでは無いか、と予測できる。


市場を独占しているAmazonであっても、常に成長戦略を開拓し続けることが重要であり、じっとはしていられない、という状況である。

データセンター業界ではクラウドは必要ない、とされている意外な事実

AFCOMと呼ばれる、データセンターの業界団体が、2009/2010年のデータセンター傾向についての業界調査を行い、その内容を報告している。

このデータセンター業界におけるクラウドコンピューティングに対する意識調査を行ったところ、非常に興味深い結果がでている。

まずは、データを生のまま見てみたい。
下記が、データセンタで採用されている様々な新規技術と、それを実際に採用した、都'回答している比率をまとめたものである。
Cloud Computing 14.90%
Cluster Computing 50.00%
Virtual Processing 72.90%
Web Applications 70.40%
Automation 54.80%
クラウドコンピューティングを実際に採用している、と回答しているデータセンター事業者の数が、15%以下、とかなり他の技術と比較しても著しく低い状態にある、という事がが分かる。

一般の企業でクラウドコンピューティングの採用割合は伸びており、調査によって数字はまちまちであるが、ものによっては全企業の50%がクラウドコンピューティングを何らかの形で採用している、という統計もある。それと比較して、データセンターでは何故こんなにクラウドの採用状況が低いのか?


もう一つ、同じ調査で出ている結果をみたい。

これは、データセンタ各社が採用を考慮したが、最終的に断念した技術を列挙し、それぞれの割合を示している。
Cloud Computing 46.30%
Cluster Computing 11.70%
Virtual Processing 9.60%
Web Applications 4.80%
Automation 15.40%
非常に興味深いのは、クラウドコンピューティングがこの結果だと46%、と他の項目を大きくなる、引き離して大きい、という事である。

つまり、データセンター業者は、クラウドコンピューティングについては調査を行い、評価も行ったが、多くが最終的に採用しない、という結論に至っている、という現実である。

この状況を、どの様に分析すべきか? 筆者は次の点が要因なのではないか、と想像する。

(1) データセンター業界において、まだクラウドのビジネスモデルが確立していない、というのが要因である可能性が高い。 Amazon Web ServiceやGoogle、Microsoft、Rackspaceといった超大型のデータセンターを運用するクラウド事業者が市場の大部分を専有する状況の中、一般データセンターとしては今更スタートしてもビジネスとして成立しないのでは、という懸念を持っている、と想像できる。

(2) データセンターのクライアントである企業が、そもそもクラウドコンピューティングに実は慎重になっているのでは。 企業での採用はたしかに急速に伸びているが、それを伸ばしているのは企業の各事業部門であって、IT部門ではない、という点がある。IT部門は意外とクラウドに対して慎重に構えていて、それが結局データセンターに影響を及ぼしているのでは、と想定できる。

(3) 技術的に、クラウドを構築して運用するのに、かなり専門的な知識と、ノウハウが要求される、という事実がハードウェア・ファシリティ系のノウハウ中心のデータセンター業界では敬遠される理由になるのでは。データセンタの仮想化まではVMWare等大手のベンダーの技術を導入する事で実現できるが、その先、クラウドAPIの実装、各種自動化ツール、監視ツール、クラウド独自の障害検知・対策ツール、マルチテナントのインフラ、クラウド向けの課金システム、等ソフトウェアソリューションが非常に多く、どれも提供者が小さいベンダーが主体で、オープンソフト系も多い。データセンターとしては今までに無いノウハウを要求される事になり、リスクがどうしても高くなってしまう、というのがクラウド不採用の大きな原因になっている、と想像する。