2010年10月2日土曜日

データセンター業界ではクラウドは必要ない、とされている意外な事実

AFCOMと呼ばれる、データセンターの業界団体が、2009/2010年のデータセンター傾向についての業界調査を行い、その内容を報告している。

このデータセンター業界におけるクラウドコンピューティングに対する意識調査を行ったところ、非常に興味深い結果がでている。

まずは、データを生のまま見てみたい。
下記が、データセンタで採用されている様々な新規技術と、それを実際に採用した、都'回答している比率をまとめたものである。
Cloud Computing 14.90%
Cluster Computing 50.00%
Virtual Processing 72.90%
Web Applications 70.40%
Automation 54.80%
クラウドコンピューティングを実際に採用している、と回答しているデータセンター事業者の数が、15%以下、とかなり他の技術と比較しても著しく低い状態にある、という事がが分かる。

一般の企業でクラウドコンピューティングの採用割合は伸びており、調査によって数字はまちまちであるが、ものによっては全企業の50%がクラウドコンピューティングを何らかの形で採用している、という統計もある。それと比較して、データセンターでは何故こんなにクラウドの採用状況が低いのか?


もう一つ、同じ調査で出ている結果をみたい。

これは、データセンタ各社が採用を考慮したが、最終的に断念した技術を列挙し、それぞれの割合を示している。
Cloud Computing 46.30%
Cluster Computing 11.70%
Virtual Processing 9.60%
Web Applications 4.80%
Automation 15.40%
非常に興味深いのは、クラウドコンピューティングがこの結果だと46%、と他の項目を大きくなる、引き離して大きい、という事である。

つまり、データセンター業者は、クラウドコンピューティングについては調査を行い、評価も行ったが、多くが最終的に採用しない、という結論に至っている、という現実である。

この状況を、どの様に分析すべきか? 筆者は次の点が要因なのではないか、と想像する。

(1) データセンター業界において、まだクラウドのビジネスモデルが確立していない、というのが要因である可能性が高い。 Amazon Web ServiceやGoogle、Microsoft、Rackspaceといった超大型のデータセンターを運用するクラウド事業者が市場の大部分を専有する状況の中、一般データセンターとしては今更スタートしてもビジネスとして成立しないのでは、という懸念を持っている、と想像できる。

(2) データセンターのクライアントである企業が、そもそもクラウドコンピューティングに実は慎重になっているのでは。 企業での採用はたしかに急速に伸びているが、それを伸ばしているのは企業の各事業部門であって、IT部門ではない、という点がある。IT部門は意外とクラウドに対して慎重に構えていて、それが結局データセンターに影響を及ぼしているのでは、と想定できる。

(3) 技術的に、クラウドを構築して運用するのに、かなり専門的な知識と、ノウハウが要求される、という事実がハードウェア・ファシリティ系のノウハウ中心のデータセンター業界では敬遠される理由になるのでは。データセンタの仮想化まではVMWare等大手のベンダーの技術を導入する事で実現できるが、その先、クラウドAPIの実装、各種自動化ツール、監視ツール、クラウド独自の障害検知・対策ツール、マルチテナントのインフラ、クラウド向けの課金システム、等ソフトウェアソリューションが非常に多く、どれも提供者が小さいベンダーが主体で、オープンソフト系も多い。データセンターとしては今までに無いノウハウを要求される事になり、リスクがどうしても高くなってしまう、というのがクラウド不採用の大きな原因になっている、と想像する。