2010年10月7日木曜日

北米でのManaged Hosting Providersの株価が好調: クラウド事業のモデルが評価

北米でのManaged Hosting Providersの3Q/2010の株価が好調である。  

Managed Hosting Providersという業種は、主として企業のIT資産(ハードウェア、ネットワークも含む)を自社のデータセンターで管理し、IT全体の運用、管理をサービスとして提供するビジネスである。コロケーション事業と異なり、ネットワーク、さらにOS、仮想化レイヤー、基幹業務アプリケーションも含めた資産の管理運用を行う事がポイント。

MHP業界で最も株価の伸びを見せたのは、Savvis Communications社(SVVS)、Rackspace Hosting社(RAX)である。  両社共に3Qの期間で40%の株価の伸び、という驚くべき数字を出している。これを追って、Terremark Worldwide社(TRMK)の32%、Navisite社(NAVI)の27%、と総じて25%以上の伸びを見せている。

MHPという、ある意味では非常に地味なIT運用事業が何故ここまで投資家に人気があるのか? 

企業がIT資産のセキュリティやコンプライアンスに大きな関心を寄せる中、長年その2点に関する投資を行ってきたMHP事業社に対して、企業が改めて積極的なアウトソースを活発化させている、というのが現状のようである。 合わせて、クラウドコンピューティングサービスも同様のセキュリティレベルで提供できる、というビジネスモデルが大きく評価されている、と考えられる。 

最近の動きとして注目されるのは、CoreSite Realty社(COR)というデータセンター専門のREIT事業社がIPOした、という事である。 同業の公開企業である、Digital Realty Trust社(DLR)とDuPont Fabros(DFT)社と並んで、REIT事業社は3社目になる。 

下記が、Data Center Knowledge社がまとめた、3Q/2010の関連企業の株価動向である。
この時期のDow Jones の平均株価は8%上昇、NASDAQ市場は12%の上昇を見せているので、MHPベンダーは全体的にかなり顕著な伸びを示している、という事が言える。

各社の伸びを、2010の頭からの比較を示しているのが次の表である。 
CDNの大手、Akamai社を筆頭に、MHPベンダーは、50%以上の伸びを示しているので、MHP業界の成長は、3Q/2010に限らず、長期的な視野でも伸びを示しており、今後の成長も期待出来る、と考えられる。

日本では長年、SI事業社が企業向けのIT資産を構築、運用する文化が育ってきている。 特にに基幹業務になると、SI事業社が中心になって企業向けの上流コンサルティングを始め、システム構築、運用、等の業務を提供し、北米でのMHPにかなり近い内容のサービスを顧客に提供している、と解釈する事が出来る。 

MHPの大きなポイントは、データセンターを運用し、顧客のIT資産をそこで運用する事に特化したサービスを提供している事である。広大な土地のあるアメリカでアウトソース事業が育ち、逆に土地の非常に少ない日本(特に東京)ではオンサイトのIT資産運用が中心になっている、というのは、考えてもみれば非常に不思議な状況である。

その鍵は、MHPベンダーがかなり早い段階からセキュリティやコンプライアンスを意識した運用サービスを提供できるインフラを構築し、顧客企業に対してそのメリットを明確に示してきた、という事にある、と分析出来る。  要するに、経済的なメリットは当然ながらも、さらに顧客との間に信頼関係があるからこそ、アプリケーションも含めたIT資産のアウトソース出来る、という事ではないか、と考えられる。

このように顧客との信頼関係を非常に重要視するビジネスモデルが、クラウドコンピューティングビジネスを始める、というのは考えようによっては非常に魅力的なサービスになりうる。クラウドコンピューティングの問題とされている、プライバシー、セキュリティへの懸念がこういった信用関係をとおして払拭出来る可能性があるためである。  

現に、Rackspace Hosting社は、クラウドコンピューティング市場においてはAmazon Web Serviceと並ぶ規模に成長しており、明らかにAWSと異なる顧客層を確保している。 

このモデルは、セキュリティやプライバシーの確保を重視し、尚且つ顧客との信頼関係を重視する日本企業にとっては非常に参考になるビジネスモデルであり、日本ではクラウドコンピューティング事業を伸ばす大きな要因になる可能性が高い、と思うところである。