2010年10月2日土曜日

AWS初のクラウド事業投資、ストレージアプライアンス企業:Cirtas => その裏にある戦略とは

Cirtas社は、San Jose市に本社を置くストレージ事業者である。

今回発表した新製品は BlueJet Cloud Storage Controller と呼ばれる、エンタプライズ市場向けのクラウドストレージアプライアンス製品。  

もう一つ、同時に発表したのは、同社がNEA、Lightspeed Venture Partners、Amazonの3社から合計 $1000万ドルの投資を受けた、という事である。最も興味深いのはAmazonにとって、クラウドベンダーに投資した初めての案件である、という事。

さて、製品の方であるが、Bluejet Cloud Storage Controller はエンタプライズが現在抱えているパブリック、プライベート、ハイブリッドの3つのインフラの統合という問題を解決するためのストレージ製品として位置づけられており、競争の激しい市場にまた一社加わる事になる。 

Cirtas社の製品の最も大きな特長は、複数クラウドを常に監視し、データ転送速度、セキュリティ、許容量、等を比較した上で最適なクラウドストレージプラットホームを選択、データを動的に移動させる機能を自動化している。この最適化のために、製品はアプライアンス内部でクラウド間のデータを移動させるためのストレージアレイと、各クラウドの状況を監視するダッシュボードを装備している。 (下記の図はダッシュボードの画面)

cirtas

エンタプライズにおいては、ローカルストレージを運用管理するのと同じ様にクラウドストレージも使いたい、というニーズがある事に着目し、製品はデザインを行っている。 アプライアンスの内部構造的なとして、RAM、SSD、HDDストレージもアレイを多重化装備し、さらにクラウドと直接接続するためのゲートウェイ、さらにWAN最適化の機能をサポートしている。


下記が製品のアーキテクチャ図である。

cirtas


さて、もう一つの関心は、何故こんな会社にAmazonが投資をしたのか、という事である。 自社でVirtual Private Cloudサービスも提供、エンタプライズ向けのソリューションを強化している中、敢えてこういう会社に投資をする理由として次のような事が分析される。


1) VPCを適用するにしても、クラウドのストレージを管理する機能は社内のIT部門の管理下に置きたい。 そのため、何ら家の形でのアプリアンスが必要であり、Amazonとしてはそれを推奨するソリューションが必要になってきた。この辺の市場がどの様に成長するかはAmazonにとってまだ不確定な市場なので、買収ではなく、VCとの共同投資という範疇に留めている可能性あり。


2) 企業内のプライベートクラウド市場は、VMWare、Oracle、IBM等の大手ITベンダーがSIソリューションを主体として提供するビジネスモデルである。こういう市場に、Amazonが段々と入りにくくなってきている、という事を懸念している可能性が大きい。Cirtas社のようなアプライアンスという製品をもつハードウェアベンダーと組む事により、SIソリューションモデルの中にAmazonのサービスを、SIが導入しやすい形式で提供する事が必要だ、とAmazonが認識してる可能性あり。


3) SMB、Web2.0市場は、Amazon Web Servicesを大きく支えているが、今後の市場予測では、クラウドの市場はエンタプライズ系にドンドンとシフトすると共にSMB、Web2.0企業からの売上マージンが薄くなってくることが予測されている。Amazonとしては、従来の顧客層に依存したビジネスモデルを継続する事に大きな懸念を感じているのでは無いか、と予測できる。


市場を独占しているAmazonであっても、常に成長戦略を開拓し続けることが重要であり、じっとはしていられない、という状況である。