2012年4月13日金曜日

[#Cloud #クラウド ] 1社のクラウドサービスで閉じたクラウド戦略であってはいけない理由

1社のクラウドサービスで閉じたクラウド戦略であってはいけない
 
昔からの言い伝えで、「全てを卵を一つのバスケットに入れてはいけない」という諺があります。イースターの祝日に良く行われる、イースタエッグの祝い事が毎年4月上旬に北米ではよく行われるが、きれいに色付けした卵を広場の所々に隠して、子供達が競ってそれをバスケットに入れて集める遊びである。この諺は、一つのバスケットに卵を全部入れてしまうと、万が一転んだ時に全部がいっぺんに割れてしまうので気をつけなさい、という意味である。

企業に於けるクラウド戦略を策定する際にも同じ様な論理が働く。
一社のクラウドサービス事業社に企業のIT資産を全て移行してしまうと、大きな失敗に繋がる可能性が高くなる、という事である。

ここで重要な事は、クラウドサービス事業社の立場としては、上記と全く異なる立場でお客さんに自社のサービスをプロモートする、という事を理解する必要がある。

実際、JoyentAmazonRackspaceVMWareHPCloudSigma, 等のクラウドサービス事業社は、自社のSLAの強み、DRソリューション、セキュリティ対策、等自社のサービスが如何に堅強で安心してIT資産を預けられるかを具体的ににプロモートしている。企業間の競争というのはすばらしいもので、業界全体の質的な向上には非常に良い方向である、と言える。
問題は、リスク回避、という観点においては、どのクラウドサービス事業社も所詮、自社のデータセンタ内で閉じたソリューションしか提供していない、という事である。複数データセンタ間での多重化、バックアップ、プライベートクラウド連携によるハイブリッド化、等テーマは色々とあるが、クラウド事業社自体が重要障害を起こしたら全てが壊れてしまう、というリスクは依然残る。

最終的には、ユーザ自身が、クラウドサービス事業社に依存しないリスク回避の為の施策を考えて、実行に移す必要がある、という事を改めて認識する必要がある、というのが今後の最重要課題である、という事を主張したい、


実は、「一つのバスケットに全ての卵を入れる」、という行為自体は、えも言われぬ安心感を産む、という事も事実である。
何せ、問い合わせ窓口は一つだけだし、ベストプラクティス、当面に於いても専門家から統合的なコンサルを受ける事が出来るわけである。

このブログの筆者である、Mark Thiele氏は、Switchと呼ばれる、ラスベガスに拠点を置くjoyent
というデータセンターの運用を経営している会社のEVPである。
同氏は、FluidITというIT運用コンセプトを提唱しており、よりAgileで、より効率の良いITエコシステムを作る必要性を主張している。この中で、マルチクラウドを統合的に運用管理することによるリスク回避、地理的なカバレッジの拡大、アプリケーションの多様性、新規技術の早期導入、等の価値の大きさを特に重要している。

この記事でも同様のアプローチをしている。
幾つか、非常に興味深いポイントを述べる。
1)クラウド、特に複数のクラウドの運用はリスク回避を企業の責任として持つ際には不可避の選択になる。
2)マルチクラウドを効果的に運用、管理するコンポーネントの導入はその為に非常に重要な要件となる。
3)企業に於けるIT運用のガバナンスは、マルチクラウド管理のコンポーネントが持つべきである。各々のクラウドサービス事業社に企業のガバナンスするモデルは今後もどんなにクラウド事業社が成長してもあまり期待してはいけない。

もちろん、マルチクラウドを管理するインフラを導入せず、全て企業が各クラウドの運用管理を直接行う、という選択もある。マルチクラウド管理のコンセプトはまだ新しく、本当に信頼出来る技術ベンダーは誰なのか、選択するのもそう簡単ではない、という考え方もある。全て独自管理する手法を採用すると、それに伴う管理コスト、工数はそれ相当に大きくなる、という事は容易に想像出来る。場合によっては、クラウドを最初から採用しない方が安く済むのではないか、という考え方も出てくる。クラウドに投資出来ないで躊躇している企業や、SIはこの辺で大きく悩んでいるケースは良く聞く。
Thiele氏の例えを借りると、交通渋滞の中でフェラーリを運転している様なものである、と述べている。企業内のIT管理者は能力は高いが、その能力をマニュアルでマルチクラウドを取りまとめる事に注力してしまったら、実にもったいない、と言う事である。

まず、ユーザとして理解しなければいけないのは、マルチクラウド環境を構築する事によるメリットである。一般的には次の様な点が上げられる。
A)  負荷分散
B)  IaaSコストの最適化
C)  レイテンシー(Latency)の最適化
D)  クラウド業界での障害に対するDR
E)  クラウド間の資産の移動をビジネスプラクティスとして汎用化する

マルチクラウド運用は、さらにクラウド採用の最大の懸念要因である、セキュリティとプライバシーを解決する為のソリューションとして考慮する価値がある。各々のクラウドの運用状況を細かくモニターし、障害やそれ以外の要因でデータの保全性に影響する様な問題は早い段階で検知し、しかるべきデータの移動、複製、ロールバック、等の処置を自動化することが出来る機能は既に存在する。

これに限らず、クラウド上のアプリケーション業務の性能の確保、ロードバランス、自動プロビジョニング、等も同様の運用管理機能である。これらをIT管理者が常に複数のクラウド上を監視し、マニュアルの操作をするのではなく、マルチクラウド管理レイヤーがルールベースの自動化作業に置き換える事によって、IT管理業務をクラウドに移行しても、SLAを十分に確保することが出来る、という事が見える様になってくる、と期待する。またそうなると、クラウド、それもマルチクラウド運用も出るの採用に踏み切る為の判断材料を定量的に見積もることが出来る様になる、という事が期待される。