2013年3月5日火曜日

[#Cloud #クラウド ] OpsWorksとAWSバイオドームの関係?AWSの発表したOpsWorksの本当の意味と、今後のIaaS市場の流れ


一言で表現すると、AWSの今後向かっている方向は、バイオドームである、と評されている。様は全てのIT運用管理をAWSの提供するサービスで閉じてしまおう、という事である。従来のAWSの持っていた、3rd partyベンダーとのエコシステムを少しずつであるが、壊しつつある、という考え方であり、業界としては大きな関心をもって注目すべきである、と言う意見が多い。

OpsWorksとは何か?
OpsWorksは、AWSが提供する自社のインスタンスを操作するためのAPIと、オープンソースで提供されているChef(ソフトウェアのインストールと初期化を管理するオープンソース)が合体した様なものです。OpsWorksで構築するのは、AWSで作成するインスタンスや関連するリソースで、従来AWSのコンソールで管理していたリソースをプログラミング出来る、という事です。書いたコードは、Stack(スタック)と呼ばれます。要するに、StackはAWS上のアプリケーション、という事です。DevOpsの狙いは、従来サーバやインスタンスの操作が中心だったAWSの利用を上位のアプリケーションのレイヤーに移行し、システム全体のアプリケーションライフサイクルを管理できるような操作環境を作り上げる事です。この技術、元はAWSが行った数少ない買収の一つ、Peritorという会社から買い上げたScalarium、という製品をベースにした物です。

パートナーにとってどういう意味を持つか?
この発表は、今後のAWSパートナーネットワークに少なからずとも影響を及ぼすもの、と考えられます。大手のSIはまだあまり大きな心配は必要としていませんが、AWSマーケットプレイス等に自社の3rdパーティ製品を掲載していて、尚かつクラウド管理等、AWSの管理機能をエンハンスする様な内容のソリューションを提供するベンダーは今後AWS本体のこういったサービスと直接競合する可能性が高くなっている。OpwWorksに限らず、最近の新機能の発表の一連は、明らかにAWSが自社のサービスを従来のIaaSの閉じた物から上位の方向に上り始めている、という事を示す物である、という理解が業界内で広がり始めている。

業界に対する影響は?
まず、OpsWorksは無償で提供されるので、Chef利用者を中心としたコミュニティが育成されるもの、と想定されます。Chefで作った財産は、AWS上に移植、運用、管理される事になり、かなりのリソースが蓄積されるもの、と考えられます。また、このリソースをベースに、組み合わせやエンハンスを通して新たなライブラリが構築される事も考えられます。

逆に、最大の問題として最も危惧されるのは、AWSアーキテクチャへのロックインです。勿論Chef自体のコード(レシピー)はChefが稼働するプラットホームなら全て互換性が保たれますが、実際のスタック内の記述はAWS APIそのもので、他のIaaS(プライベート、パブリック含め)では稼働する事はまずあり得ません。

AWSバイオドーム内で作ったOpsWorksのStackは最初はうまく動くかもしれませんが、アプリケーションライフサイクルが進むにつれ、だんだんと問題が表面かしてきます。

他のクラウドプロバイダにとってどういう意味を持つのか?
IaaSクラウドプロバイダーは、AWS EC2やS3に同等のコンピューティングプラットホームサービスを提供する事から始まります。今では、かなりのベンダーがこの事業に参画し、市場が賑わってます。加えて、仮想ストレージ、仮想ネットワーク等の付加価値サービスも提供し始めていますが、同時に価格面での競争が激化しており、開発投資にそんなに比重が置けなくなっている現実もあります。市場全体がこのようなCatch-Upの動きを見せる中、AWSはさらに上位のレイヤーのサービスの実現に力を入れてきました。下記が最近だけでも登場しているサービスのリストです。

Route53:AWSのDNSサービス
RDS:AWSのクラウド上のRDBサービス
RedShift:AWS上のデータウェアハウスサービス
CloudFormation:AWSのもう少し低レベルでのAWSインスタン管理ツール
Elastic Beanstalk:オートスケーリングに特化したAWSインスタンスの管理運用サービス 

AWSの現在提供するサービスラインに追いつくにもまだまだ新規サービスを作り出す必要があるのが現状です。
OpenStackの動きは顕著なものがありますが、こちらもまだまだ開発(もしくは買収攻勢)に投資を続ける必要がある様です。 

最後に:VMWareがPuppetに投資をした事がいろいろな意味でこの動きを生んだ、という分析もあります。最近では初期の投資に加えて、さらに$30Mの追加投資を行った、という事です。これは、構図で言うと、プライベートクラウド業界に於けるVMWare、パブリッククラウド業界に於けるAWS、という棲み分けになります。今後も、この関係柄は続くもの、と想定されており、いわゆる冷戦状態を他のクラウドベンダー、SIベンダーがうまく立ち回る、という市場が形成されて行くもの、と想像されます。


Ippei Suzuki
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