2012年10月9日火曜日

[#Cloud #クラウド ] 時代はソーシャルからゲーミフィケーションへ

9/16のGigaOm記事より。

企業向けのソーシャルネットワーキング技術は、昨年のSalesforce.com社のBuddy Media社の買収($689M)、や、Microsoft社のYammer社の買収($1.2B)等を筆頭に、買収対象として大きくクロースアップされてきている。このトレンドがさらに進歩して、Gamification(ゲーミフィケーション:ゲーム理論に基づく業務の最適化)をターゲットとした買収に発展するだろう、というのが同誌の予測。

ゲーミフィケーションは、ポイントやバッジの獲得、リーダーボードと呼ばれる順位表の採用、賞品の提供、等、人間が元来持っている遊び、競争心、ゴール達成感、等に対する欲望を駆り立てる点が大きな特徴である。コンシューマ向けのアプリケーションの世界では何年も前から存在し、飛行機のマイレージプログラムや、ポイント制度等、非常に種類も数も多い。
この理論を、企業内の従業員に対しても適用し、生産性を向上させるようなソリューションにならないか、と言うのが昨今の企業が考えている事である。

 ITのコンシューマ化、という言葉でも昨今のIT業界に於ける変化を見る事が出来、このゴールを達成するためには、エンタプライズが今後買収を通してそのノウハウの獲得に動くだろう、と予測されている。

Gamification Summitという業界団体も存在し、そのChairmanである、Gabe Zichermann氏によると、買収は今後12~24ヶ月間の間に非常に活発になるだろう、と予測している。

同氏は、既に市場として確立されつつある上記のソーシャルネットワーキングアプリにさらに機能を追加する形でゲーミフィケーションアプリが採用されるパターンが増えるだろう、と予測しており、既にSalesforce.com社のRypple社の買収や、IBM社が自社開発している、Innov8の様な動きが顕著になりつつある。

Gartner Groupの予測によると、2014年までには、70%のグローバル企業が少なくとも1つのゲーミフィケーションアプリを採用しているだろう、と予測しており、さらに企業内の業務改善に取り組む部門の半分は、2015年までにはその業務をゲーム化するだろう、と予測している。
その方法としては、自社内で開発を促しているケースもあるが、BunchballBigDoorGigya等のベンダーの技術を採用するケースも急激に成長している。

Bunchball社は、2007年に自社技術を開発し、既に200社の顧客を持つまでに至っている。顧客も、Warner Brothers、Comcast、Hasbro、Mattel等、大手のエンタプライズが目立つ。興味深いのは、従来、ゲーミフィケーションの採用を通してコンシューマを引き込む戦略を作り上げていたのが、今では企業内の従業員の生産性を上げるために利用されている、と言う点である。

これらの企業に共通している点として、ゲーミフィケーションが企業内の従業員にITアプリケーションを積極的に利用してもらうためのモチベーション強化に寄与している、と評価している、と言う点である。

Bunchball社は、昨年、Nitroと呼ばれる製品を発表しSalesforce.comのAppExchangeで提供を開始している。この製品は、Salesforce.comのユーザに対して簡単にゲーミフィケーションツールを統合するソリューションを提供している。同様のアプローチで、Jive社との協業で、Jive社のソーシャルビジネスプラットホームにもゲーミフィケーションソリューションを提供している。



今後大きな分かれ道になりうるのは、エンタプライズ企業がこういったベンダーの技術を採用するのか、それとも自社開発に投資するのか、と言う点である。これについては、まだ方向性が見えていないようである。その決め手になるのは現在先行的にこの技術を採用している事例の成長具合であろう。アナリストの中でゲーミフィケーションは単なる一時のトレンドであろう、と評価している人も多く、実際の成果がどういう形で現れるかが業界が注目しているところである。



さて、このトレンドは日本のIT業界によって吉と出るか、凶と出るか。元来、NTT DoCoMoのiモードの時代から携帯端末でのゲームの文化は日本市場が欧米社会より遥か先を走っていた年代が長い。これはスマートフォン等と言う言葉が登場するはるか前から登場し、広く市場に浸透していった文化であり、そこで培われたノウハウは相当の価値がある、と容易に想像できる。ここで蓄積されたノウハウを、この記事で言うエンタプライズの世界にうまく展開できる方法論については、北米の市場の動向をよく見ながら、うまく日本なりのゲーミフィケーションのビジネスを作り上げる事が大事なのでは、と思う。

これはゲームの世界と、エンタプライズの世界という、かなり距離のある業界を両方知る事により始めて見いだせるビジネスなのでは、と考える。意外とこの2つの業界は距離が離れており、日本国内に於いては出来るだけこの2つの業界の間にブリッジを築くための動きが出る事を期待したい。

2012年10月4日木曜日

[#Cloud #クラウド ] Amazon Web ServicesとSalesforce.comがクラウド事業から離れる!?

enStratus社のJames Urquhart氏はいつも興味深い記事を投稿しているが、久しぶりにビジネス色の濃い記事をGigaOmに投稿してます。

題目は、「何故、AmazonとSalesforceがクラウド業界から撤退しているのか?」という一見ショッキングな内容。

彼は、2011年にに似たような予測をしていて、その時はMicrosoftとGoogleが次のクラウド業界を独占するだろう、とうものであった。この予測は見事はずれ、今はAWSとSalesforce.comが市場の2台巨頭である事を認めている。

この辺のスタディの経緯、また、何故今はAWS、Salesforce.comなのか、まずはその辺からの説明を行っている。

クラウドコンピューティングは今や、万能選手ではない、という事は市場が十分に理解している。ここ数年の間、様々なクラウドサービスが登場しているが、本当に成功しているのは、ほんの一握りしか無い、と言うのが彼の解釈。

SaaSに関しては、まずこのカテゴリー自体が事業として成立している事自体が驚きであるが、つまるところ、特殊なコンシューマアプリケーション、もしくは汎用的なビジネスアプリケーションでの成功事例が全体を占めている、と言える。

IaaSに関しては、2つのアプリケーションモデルしか成功させていない、と言える。一つは、大規模なウェブアプリケーションと、データ分析/処理アプリである。一方、企業のレガシーアプリケーションのクラウドへの移行はまだ大きな動きになっていないし、今後もあまり期待されていないのが現状。結局、IaaSの価値は、アプリケーションのもつ2つの要件、i) 大量の演算処理の高速実行(データ処理)、ii) 負荷の変動が激しいアプリ(Webアプリ)に限定されている、という事が言える。

PaaSに関しては、期待が大きい一方、IaaS/SaaS程の利用実態が無く、今後期待されるのは、IaaSで成功しているアプリのための開発/運用環境、もしくは特定のSaaSアプリの機能拡張のための環境という2つに限定されるのでは、と考えられる。


何故、Amazon Web Servicesがこれだけの巨大な独占事業に成長したのか、その理由は決してAWSが他社が追随出来ない機能やサービスを持っていた、と言う訳ではない。最大の問題は、競合他社がAWSに真に対抗すべく戦略的な動きを取らなかった事にある、と言いたい。IaaS事業者の殆どはEC2やS3と同等のサービスに加え、場合のよってはRDS(DB)やSimpleDB(Key value store)と同等の機能をサービスとして提供しているが、この程度ではAWSが本質的に持っている力と戦略を理解している、とは思えない。 AWSの本当の戦略性は、Reserved InstanceとかSpot Marketのようなクラウドインスタンスを再販する事業モデルや、統合された管理コンソールの提供、また、クラウドユーザの求めている本当のクラウドサービスの品揃えをしっかり把握し、実行に移している、と言う点である。

たしかにMicrosoftは競合力はあるが、今は開発者に特化した開発コンポーネントを提供しているサービスに過ぎないのが現状である。AWSのサービス開始当初もそうであったが、クラウドの本当の価値は、企業の開発部門では無く、オペレーション部門にもたらされる、という事をAWSが知った時点から大きく成長を遂げた、という事が言える。これは、James Hamilton氏が長く主張していたポイントである。Reserved InstanceやSpot Marketは正にその戦略の現れである。

この流れの中で、最近新たに、Glacierと呼ばれるデータアーカイブ専用の低コストクラウド、EC2 Reserved Instance Marketplaceという、Reserved Instanceを再販できるマーケットプレイスが発表されている。11月に予定されている同社のカンファレンス: re:Inventにおいても、このビジネスの新たな方向性がさらに明確になる事が予測されている。

一方、GoogleもAWSと競合するポテンシャルを持っているが、上記にオペレーション部門に対するサービスを確率する動きはまだ何も見えていない。アプリケーション開発の管理インタフェース、様々なGoogleサービスを統合的に管理するコンソール等、まだまだ道のりは長い、と言える。

このような状況を見るにあたり、AWSの確固たる地位が単に機能セットとかサービスの種類、という事ではなく、ターゲット層の見極め、それに適合したメニューの確率、と言う点で大きく他と差を付けている、と言うのが論点である。


もう一つ、クラウド市場で成功する大きな要件になるのは、様々なビジネスサービスを単一のインタフェースを通して提供する事が出来る、という事である、と信じる。しばらく前まではMicrosoftやGoogleの様に業務アプリケーションを多く持つ会社がこのセグメントリードする、と思っていたが、今はSalesforce.comが大きく市場を牽引している、と言える。

Sadagopan Singham氏が書いたブログが先日開催されたDreamforceイベントについて述べているが、このイベントに参画して実感したのは、Salesforce.comは「Enterprise Nerve Center」(企業の中枢神経)を目指しており、企業内の様々なビジネス要件に対して統合的にサービスを提供できる中心的な存在である、と解説している。

Salesforce.comの最大の強みは、企業内の従業員、そのパートナー、そして顧客との間のコミュニケーションの統合、それもビジネス面に加え、ソーシャル面でも同じ様にまとめあげる事が出来る、と言う点である。新規の業務が発生すると、それをうまく企業内の各部門に効果的に展開し、納期、売上を最大限に最適化するが結果的に見えるメリットである。自動化の促進、人間同士のコミュニケーションの効率化、そしてそれをすべて定量的に評価/分析できる、と言う点も優れている。

これは非常に先進的なアプローチである。従来の企業の事業に於けるITソリューションと言うのは、ドキュメント/帳票を電子化し、それを企業内でうまく回す事に注力されていた。結局それを動かすのは人間である事には変わらないし、コミュニケーションも従来の電話、emailの世界から脱していないのである。

Microsoftはこの先進的な市場をさらに先に持っていく力を持っている。Oracleもポテンシャルがある、と言える。かなり距離を置いてGoogleがうごめいている、と言う感じ。しかし、Salesforce.comはこの中で特に秀でて企業内のビジネスモデルを電子化する事に成功している、という事が出来る。


Disruptionというのは正に、AWSやSalesforce.comが実現しつつあるビジネスの事をさす、と言える。
両社については、今のこの状況が今後の市場のリーダーシップを保証する訳では決してないが、既存の機能セット重視、開発者をターゲットとしたクラウド事業から、企業業務全体、さらにオペレーション部門をターゲットとしたクラウド事業に変遷を遂げたこの2つの会社は、新たな市場の開拓、そして確固たる市場シェアの確率に大きく寄与する可能性がある、と言える。

一つ、今後起きうる可能性のある動きとしては、後続部隊の中で、Microsoftが大きく事業を延ばす事である。
従来の事業モデルだった製品ビジネスからサービス主体のビジネスへの移行、時間はかかりつつも、確実にその方向に向かっている事実がある事、さらに既存の大きな資産をこの新しい事業に移行するのは時間の問題である、と言える。

懸念されるのは、他のクラウド事業者がAWS、Salesforce.comのポジションからまだ遠く離れている、と言う点である。クラウドにとって、まだ開拓されていないニッチの市場もあるだろうが、そういった未開拓の市場へ参入もまだ見られない(様はAWS/SF.comが既に凌駕している市場に入り込んでいるだけ)。


以前から、クラウド事業は技術ではなく、ビジネスである、という事は内外から言われていたが、さらにビジネスから流通モデルへの変遷が起き始めている、と言うのがこの記事の言わんとしている事なのでは、と想像する。

この領域は、IT企業の持つノウハウだけでは通用しないところに至っている、と言う事が出来、そうだとすると、元々流通業であったAmazonの最も得意としている世界にクラウドを引き込んでいて、それを我々羊達が大人しくついていく、というモデルが出来上がっていると思うと少しがっかりもする今日この頃である。


2012年9月29日土曜日

[#Cloud #クラウド ] OpenStackの隠れた一面 = エコシステム•ロックイン

Open Stack Summitを数週間後に控えた状況の中、Open Stackのオープンソースに関する懸念がいくつかのレポートを通して表面化し始めている。

Gartner Research: Lydia Leong氏
ベンダーロックインの懸念を解消するためのオープンソフトウェアとしてのOpen Stackでありながらも、新たに、"エコシステム•ロックイン"と呼ばれる問題がOpen Stackの問題として登場している、と言う点を指摘している。合わせて、この問題を避けるために、3rd partyによるクラウド管理ツールやAPIライブラリの採用が必要である、と提言している。

同氏が書いたレポート、
によると、元々、「オープンであり、広く採用する事が自由にできる標準」、という事で定義されているオープンソフトウェアとしてのOpen Stackは、実はかなり現実と離れている、と指摘している。

「Open Stackは複数のIT企業によって制定され、他に見られるような個人的な寄与によるオープンソフトウェアとは性格を異にしている。Open Stackの団体を構成している企業で、例えばRackspace社は、Amazon Web Service (AWS)を明確な競合相手である、と見ており、一社だけではAWSの独占的な市場成長を止める事が出来ない、と判断しているが故にOpen Stackという団体の運営を行っている、と言える。」
"OpenStack is dominated by commercial interests, as it is a business strategy for the vendors involved, not the effort of a community of altruistic individual contributors. Some of the participants, notably Rackspace and other service providers are afraid of the growing dominance of AWS in the cloud IaaS market and do not believe that they have the ability to muster, on their own, the engineering resources necessary to successfully compete with [Amazon Web Services] at scale, nor do they want to pay an ongoing license fee for a commercial [cloud management platform]  like VMware's vCloud stack."

こう述べた上で、この要件がある故、今後のクラウドデータセンタをデザインする上で、Open Stackをコアにしたアーキテクチャを目指してはいけない、と述べている。

一方、先行的に新技術を導入したり、まだ若いソースコードの品質を向上するためにエンジニアリソースを投入したい、という会社にとっては非常に適している技術である、と言及している。

このレポートはこのリンクにて無償で読む事が出来る。

もう一つ、Open Stackに対する懸念材料として、組織が業界の大手ベンダーによって構成されている、と言う点である。参加企業は、Rackspace, NASAからスタートして、IBM, HP, Cisco, Dell, SUSEそして最近ではVMWareが名を連ねている。
各社の共通の目的としてOpen StackをAWSに対抗できる技術として育てていこう、という意識がある点では良いが、それと同時に参加企業各社は明らかにIT業界の中で競合し合う企業である、という事実も認識する必要がある。

Open Stackの狙いとして、クラウドアーキテクチャの中Linuxの様な存在にしたい、という意見が多く登場しているが、果たして本当にこの競合状況の中でLinuxの様な統一規格が実現できるのか、それともUnixの様に各社各様、それぞれ異なる仕様をもったAPIになってしまうのか、という懸念が大きく残る。

最近のOpen Stack Foundationの動きは、Rackspaceが従来持っていたスターティングメンバーである権力状態から脱出し、影響力を少なくする方向に動いている事が顕著である。
新組織は、リーダーをSUSEのAlan Clark氏、Cisco VP/CTOであるLew Tucker氏を登用し、Rackspaceの幹部が退いている事が明らかになっている。また、"Network Connectivity as a Service"といった新機能を盛り込んでいる、Folsomというリリースも、Rackspaceの影響がかなり少なくなっている、という事が話題になっている。



個人的な所感としては、90年代前半に起きた、Unix標準化に向けてIT業界が大きく動いていた時代を思い出させる状況である。
当時は、Sun MicrosystemsがSolarisで絶対的な市場を確保する中、X/Openという業界団体が登場し、広く採用できるオープンなUnixのカーネルAPIを制定する動きに続いて、Open Software Foundation (OSF)と呼ばれるHP, DECを中心としたさらに大きな業界団体が産まれた時代である。結果として、OSFの存在価値が一定の評価を受ける中、実際には参画企業各社がそれぞれ独自の仕様を盛り込んだOSF準拠のUnix OSを開発する結果となり、メンバー間のUnixアプリケーションの互換性は十分に確保できなかったのが現実。細部まで仕様を標準化できない要因として、各社が製造するハードウェアに依存するAPIであるが故に、そもそも共通化できるカーネルのAPIの範疇が狭すぎたのでは、という意見も多く登場した時代である。
クラウドAPIも、下部レイヤーに存在するVMハイパーバイザ、ネットワーク仕様、CPU/ストレージ等のインタフェース等が少なからずも意識した仕様になるはずであり、各社Open Stack仕様を100%共通化しようと思っても無理な相談なのでは、と思うところである。

Apple iOSの様な下から上まで全部一社で統一した仕様がよいか、と言ったらそれはそれで問題がある事はわかるが。





Ippei Suzuki



2012年8月7日火曜日

クラウド2.0、を考える

昨日は昔の会社時代の大先輩とロスのダウンタウンで食事をしました。クラウドコンピューティング関係のビジネスに取組むきっかけを4年前に頂いた方で、考えても見れば、その時から大変お世話になっています。
色々と情報交換をさせて頂く事を通して考えさせられる事がいくつかありました。

まず、クラウドの定義自体が日米で少しズレが起きている、という事。特にエンタプライズ系の市場ではクラウド=アマゾン=よそ者、という解釈が意外と広がっている、という点。クラウドと距離を置こう、という人口がまだ多い事が要因なのでしょうか。

もう一つは、オープンソフトウェアとクラウドとの関係がまだまだ理解されていない、という事。クラウド基盤を作るところまでは或る程度ベンダーはもう固まっているけど、その上のミドルウェアの市場(ID管理、セキュリティ、DR、DB、課金、等)はまだ混沌とした乱立市場。ここの整理をするのにオープンソフ
トウェアの市場が大きく台頭して来ているという現実を見るにあたり、オープンソフトに対する新しい取り組みが重要になって来てます。まだそれが見えている方が非常に少ない。

そして最後に、クラウド業界が大きく2分化している、という事。いわゆるエンタメ系のWeb2.0市場と、後を追って参入しているエンタプライズ系の市場では、客層、利用方法、主要ベンダー、全てに置いて2極化している、という事を体で知る、という事です

先輩の言葉を借りると、クラウド2.0の時代、という事です。スピードの早いこの時代、これを理解する事によって、無駄な時間を浪費しない、効率のいい事業戦略が切望されており、それをサポートすべき自分の役割を改めて確信する、大変有意義な夜でした。

2012年6月23日土曜日

Amazon Web ServiceのCTO, Werner Vogel氏が見る、5年後のクラウド業界

GigaOmが主催するイベントにおいて、AWSが予測するクラウドコンピューティングの業界について、4つの予測を説明している。
折しも、5年前のこのイベントに同氏が初めて登壇し、EC2とS3について説明した経緯があり、その時点から現在に至るまで相当の進歩を遂げている中、今後それがどの様に発展するのか、興味深く読める記事である。

Vogel氏自身も5年前は今日のクラウドがこれだけビジネスに大きな影響を与える事になる、とは予測していなかったようだ。

Werner Vogels, CTO and VP, Amazon Structure 2012
ビデオの配信はここ:http://livestre.am/3YHSy

2017年には次の様な事が起きるだろう、と説明している。

1)AWSの価格はさらに下がる
今まで、AWSは価格を20回下げている実績がある。確かな事は、今後もこの傾向は続く、という事であり、市場に受け入れられるサービスの重要な要件として捕えている。

2)若いビジネスは今後もクラウドで成長する
Socialcam社、Pinterest社、Instagram社等はクラウドをベースにIT基盤を作り、急成長を遂げた会社の代表である。このような会社はどんどん増えていく、と予測する。これらの会社は、従来のハードベースのIT環境をもってあれだけの急成長を実現することが出来ただろうか? まずあり得ない、と言えるだろう。そしてその傾向はますます強くなるものと考える。

3)企業のCIOは若いスタッフにチャンスを与える
ITソリューションの事になると、大企業のCIOはこういったクラウドをフルに活用した若い企業の手法に対して耳を傾ける様になるものと考える。5年前(現在)、CIOは大企業のセオリーにのみ頼っていたが、次第に大きな変化が起きるだろう、と見ている。

4)古いハードウェアベンダーは存続の機器に直面する
HPに代表される従来のハードウェア製造メーカは存続する為に大きな変革を遂げる必要がある。大きな鍵は「クラウドのマインドセット」を持つ事である。クラウドのマインドセット、とは、単に客に対してベンダーの姿勢を持つのではなく、パートナーとしての姿勢を持つ事から始まる、としている。そしてその最も大きな目的な客のITコストを下げる事にある。

AWSの姿勢は、顧客に対して110%の注目をする事、と主張している。競合のはげしいクラウド業界の中、他のベンダーと機能サポートの篠木愛をするのでは無く、顧客の求めている物をより早く提供する事が重要なビジネス要件である、と主張している。


2012年5月17日木曜日

[#Cloud #クラウド ] クラウド上でのHigh Availabilityを実現するための4つのステップ。いずれもクラウド運用のベストプラクティスとしては重要な要件だと思います。

クラウド上で可用性の高いアプリケーション環境を構築するのは一見、難しい作業の様に思えますが、重要なポイントは、クラウド上のコンポーネント全てに障害が起きうる、という事を認識しそれに対応した障害対策や自動化の対策を講じる、という意外と地味な作業を行う事です。

6月11~14日に予定している、RightScale User Conferenceにおいては、このHA (High Availability)とDR (Disaster Recovery)が重要なテーマとして様々なセッションが予定されています。多くの企業がこの課題に対して取組んでいる、という実情を反映している事からこのテーマを採用しているわけですが、RightScaleが取組んでいる "HA in the Cloud" に向けた4つのステップについて、下記の通り簡単に説明したいと思います。


1. Build for server failure 
サーバの障害は必ず起きるという前提でシステム構築をする
クラウド上のインスタンスは、データセンタにあるサーバと同様のレベルのサポートが必要です。特にサーバの障害に対する対応策の設計は大事です。サーバ障害への対処の第1ステップは任意のサーバ/サービスのリブートに影響を受けない様な環境で動かす事です。下記の点への着目が必要です。
  • 自動スケーリングを設定し、様々なトラフィックの増減のパターンに対して対応出来る様な設計にする。
  • データベースのミラー、マスター/スレーブ環境等を設定し、データの保全性を確保しダウンタイムを最小限に留める。
  • ダイナミックDNSや、固定IPを利用し、アプリケーションが利用するインフラのコンポーネントが常に同期している事を保証する。

2. Build for zone failure
クラウドゾーンも必ず障害が起きる、という前提でシステムを構築する
サーバ単位で障害が発生するばかりではない。停電、ネットワーク障害、落雷による電力系統の障害、等さまざまである。こういった複数のサーバ群を対象とした障害に対する対処もアプリケーションとしては必要になってくる。AWSのAvailability Zoneの様に、こういた地域単位の障害に対する保全性、耐久性を確保したサーバ群の単位をゾーン(Zone)と呼び、複数のゾーンにまたがった次の様なアプリケーションの実装が必要になってきます。
  • 少なくとも2つのゾーンに対してアプリケーションが稼働するサーバ群を配置する。
  • ゾーン間でのデータの同期を行う。通常の範囲でのデータ同期は定額で行う方法がある。

3. Build for cloud failure
クラウド自体もも必ず障害が起きる、という前提でシステムを構築する
稀なケースで、一つの地域(リージョン)に配置される複数のゾーンが同時に障害を起こすケースもあります。2011年、4月に起きた、AWSのサービス障害がその一例です。ここでいう「リージョン」とは、個別のAPIをもつ独立したシステムリソースの事を指し、RightScaleが定義するクラウドの単位でもあります。
可用性(Availability)を限りなく100%に近くする為には、このリージョン(クラウド)単位での障害にも対応出来るためのプロセスを考慮する必要があります。しかし、クラウド間でシステムを構築する際にはいくつかの難しい課題に直面します。API、システム構成等、インタフェースの違い等がまず問題になり、これに対しては、アプリケーションとしては特定のクラウドAPIにとらわれない、汎用的なインターフェースを採用するコンセプトに基づいて構築される必要があります。
RightScaleの提供するクラウド管理システムはこういったクラウド間の違いを吸収し、開発者、システム運用管理者に対して、障害対応力に極めて強い、標準コンポーネントによって構成されるアプリケーション設計戦略を構築するのに大きな効果を発揮します。特定のベンダーが提供する複数のリージョン間にに搭載されるアプリケーションの実装ではなく、ベンダーにも限定されない複数のインフラ提供者にまたがった、次の様なアプリケーションの運用が非常に容易になります。
  • データのバックアップを複数のリージョンやIaaSプロバイダ間で行う。プロバイダ間のデータの転送はインターネット上で行われるので、特にデータセキュリティの保全が重要になります。
  • 障害時の補完用のインスタンスを別リージョン/クラウドに配置することにより、ゾーンやクラウド上の障害に対するキャパシティ設計を行う。
  • いっぺんに大規模なクラウド間システムを構築するのでは無く、段階をもってシステムの障害対応戦略を拡張していく(複数ゾーン対応から複数クラウド対応へ)

4. Automate and test everything
全ての管理工数を自動化し、テストを行ってから実装する
システムの構成を順次サーバ障害、ゾーン障害、クラウド障害へ対応出来る様構築していくにつれ、障害に対する対策手順を自動化していく事が次のステップになります。クラウド管理ステムは、上記の様な複数サーバ、ゾーン、クラウドの単位それぞれに対して、障害対策手順を設計し、運用/管理出来る様な機能を提供します。障害時は大抵時間との戦いになるケースが多く、手順を自動化する事は非常に重要、且つ有効なソリューションになる事は自明で、次の様な対策が勧められる。
  • 全てのステージに於けるデータのバックアップを自動化し、障害発生時にはデータの保全性を確保する様に設計します。
  • 常に、システムを監視し、有事の際にアラートが発生する様にシステムをセットアップし、問題が発生した時にどこでどのような問題が起きたのかを迅速に検知出来る様な仕組みを構築する。クラウドプロバイダーからの連絡を待つ方法では、情報伝達が遅い上、精度に欠けるケースが多いのが現状です。(4月のAWS障害時はその問題がよく話題に上がっている)
  • 障害対策プランは、実際にテストをする事によって初めて有効である、と判断出来る。クラウド上でのテストは従来のOn Premise上でのシステムと比較して非常に安くテストを行う事が可能になっている。特に過負荷テスト、障害のシミュレーション等は、RightScaleのコンソールを通して構造的な方法をもって行うことが出来ます。
クラウドのインフラは、DR(Disaster Recovery)やHA(High Availability)のシステム設計を非常に安く、そして確実に導入する事を可能にしている、という点は改めて評価する必要があります。最近、頻繁に発生しているクラウドサービスの障害のニュースが飛び交う中、クラウド上でMission Criticalな業務アプリケーションを何の問題も無く運用を継続し続ける会社も多いのも事実です。こういった会社はあまりニュースに登場していないだけだ、という現状を認識すべきであるが、多くの事が学べると考えます。
RightScaleの提唱するクラウドベストプラクティスと参照アーキテクチャについての上はこのリンクWhite Paper on HA and DR Scenariosを是非ご参考にして下さい。

Brian Adler @ RightScale, Inc.