Forrester Outlines How IT Organizations Will Control the Cloud
投稿者=Bernard Golden, VP, enStratus Networks
投稿日=12/13/2012
Forrester Researchという調査会社が発行した「Cloud Keys an Era Of New IT Responsiveness and Efficiency」というレポートにおいて、IT管理/運用組織が今後どのようにしてクラウドコンピューティングを導入して運用すべきか、いくつかの提案を行っている。レポートは、アプリケーションの動向と、ソフトウェアエンジニア、という2つのテーマに分かれている。
クラウドへの取り組みは開発者の意向をよく理解する事
今日のクラウドは、(主たる顧客層である)開発者が開発/運用環境として求めているサービスを具現化する事が主たる提供内容となっている。AWSが成功している理由は、フォーカルポイントをそこに絞って機能/サービス内容を提供している点である。ここで課題になってくるのは、プライベートクラウドの存在である。企業としてプライベートクラウドを導入する目的が、果たして開発者に対してアピール出来る様な内容なのかどうか、を再度評価し直す必要性をForresterは主張している。
本レポートの作者である、James Staten氏はこの点を厳しく指摘しており、社内のクラウドの利用者である開発者の求めているものが果たしてプライベートクラウド導入で満たされるのかどうか、特に既に利用しているパブリッククラウド以上の魅力/価値を実現するのかどうか、それが明確になっていないとプライベートクラウドの導入の意味がなくなる、と指摘している。
既にAWS等のパブリッククラウドを利用しているユーザ層(開発者)にとって、クラウド上での自分のITニーズはかなり明確になっている、と同氏は指摘している。プライベートクラウドを社内の開発に強要する事が、逆に開発者の生産性を下げる要因になってしまっては大問題で、十分な配慮が必要である、という事も述べている。
求めているのは IaaS、PaaSなのか、それとも?
興味深いポイントは、このレポートが開発者の求めている開発フレームワークが何であるかを分析している事。今日のIaaSが提供している、単純なVM/ストレージ/ネットワークのプロビジョニングサービスでは開発の生産性を向上させるのに寄与していない、という点を指摘している。また、このIaaSだけの環境は、むしろシステム構成の労力を強いる結果となり、作業を帰って多く生成している、という指摘もある。
この対策として、PaaSの存在が注目されている、と言える。アプリケーションの開発に必要な基本ITコンポーネントを標準的に整備してくれる事に加え、従来は個別に設定が必要であったデータストレージレイヤーとかID管理等の機能等も標準提供してくれる点が重要である。
ただし、こういった有効なツールが揃っていればいい、という事では無く、それが必要十分なフレームワークである事の重要性に加え、尚かつ、フレームワークに無い機能については従来通り下位のレイヤーのIaaSレベルでサービスも同様に利用出来る、フレキシブルな開発環境の整備の必要性を訴えている。
一例を挙げると、AWSはSQS(Simple Queue Service)というサービスを提供しているが、同様のサービスを3rd partyのコンポーネントを導入しても利用出来る様なサービスも提供している。この自由度がIaaS/PaaSの組み合わせとして重要である、とForresterは主張している。
SaaSの領域でも同様のアプローチが進んでおり、Informaticaの様に、クラウド上のアプリケーション統合サービスを提供し、異なるアプリケーションを疎結合でつなぎ合わせる事が可能になるアプリケーション運用環境を提供している。アプリケーション開発者も自身で開発したコードに加えて、ISV開発機能、クラウドサービス等を組み合わせる統合作業に力が入り、結果的に生産性の高い組織に変遷していく事が可能になる。
Forresterの提唱する5つのレコメンデーション
IT管理はサービス組織になる事
企業内のIT組織は今や、外部のパブリッククラウドサービス事業者が競争相手になっている、と意識すべきである。サービス内容、スピード、SLA面でもパブリッククラウドより低い様では問題になる、という考え方が必要である。従来カスタマイズを行う事がサービスの質として評価されていた物が果たして本用に必要なのかどうか、組織のオーバーヘッドを良く評価して対応すべきである。
IT管理組織が開発環境のメニューを提供すべき
サービス組織になる事の重要な要件は、開発者の必要としている様々なコンポーネントを提供し、実装支援する事である。最近話題になっているのは、企業内の開発者向けのポータルを作成し、企業で利用されるSaaSコンポーネントのメニューを提供するモデルである。すべてのサービスはIT組織が導入のための手続きを行っているため、ユーザ(開発者)からすれば、個別の契約交渉手続きを踏まなくてよくなる分、非常に利便性の高いサービスになる。
サービスカタログを作る
上記のメニュー化を一歩進め、提供するすべてのコンポーネント/サービスのコンフィギュレーション、パッチ付与、標準イメージの作成、等、開発がすぐに使え、尚かつ継続的な保守運用も保証される様なメニューの整備が大きな効果を生む。標準的で最新のコンポーネントを整備する事で、保守工数も標準化され、大幅に工数が削減出来ると共に、監査、等の管理工数も非常に楽になる、というIT管理者にとっても利点も大きい。
EA (Enterprise Architecture)開発者にクラウドを積極的に利用してもらう。
開発者の開発品質を確保しつつも(Consistency)、効率を最大限に引き上げる事を目的に (Agility)、クラウド上でのIT利用にEAの技法を導入する事をForresterは推奨する。クラウドの特長を活かし、企業内で統一された開発/運用環境を実現し、統一したコンポーネントを使用し、コストの削減を実現する事が論理的には可能になるはずである。標準化も、クラウドを使用する事の利便性が加われば企業内での浸透も難しくない、というのがこの考え方の根底にある。
コストの透明性を高める
Forresterは常に、クラウドのもう一つの特長である、pay-per-use(使用した分だけの課金を受ける)のモデルは非常に魅力的である、と主張している。このモデルを採用するからには、企業内で各部門が使用するアプリケーションのコストを共有出来るようにする事が重要である、と考える。これによって、コストを意識したITの利用が促進されるし、それをチェックする機構も働く。
Achieve application lifecycle agility via DevOps.
開発者にとって、クラウドが提供するセルフサービスの開発環境はよく受け入れられている。この価値は、開発の迅速性も促進する効果もあり、企業としてはアプリケーションのライフサイクル全体としてこの価値を活かす事が重要な課題になっており、開発者だけではなく、IT管理者にもその期待は大きい。両社の協業状態がすなわちDevOpsと昔から語られていたコンセプトであり、クラウドの存在は大きくそれを促進する功がある、と考える。従来のIT運用のプロセス(IT管理者側も開発者側も含む)をクラウドの導入とともに大きく改善する好機でもあり、逆に企業としての成功を左右する分かれ目にもなる可能性がある。
Ippei Suzuki
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