先日発表されている、Amazon Web Servicesの新しいサービスモデル、Micro Instances、実は、Rackspace Hosting社が自社のVPS(Virtual Private Server)クラウドサービスとして以前から提供していた事は意外と知られていない。 Rackspace Hosting の提供しているVPSサービスは、わずか256MBのRAMを搭載したLinux Cloud Serverを採用し、一時間あたり1.5セント(月額で約$10.95程度)の価格で提供している。
Amazon Web Services の提供するサービスは、明らかにRackspace Hosting社のサービスへの対向を狙ったもの、と言える。
そもそも、Micro Instancesは、クラウド上で提供されるCPUインスタンスを非常に小さな単位で提供し、ニーズの上昇と共に小さな単位でバースティングするモデルを指す。主として、
次のような負荷の低いWebサーバのニーズに対応するサービスに利用される。
- DNSサーバの、ロードバランサー、プロキシーサーバ、等、トラフィック量が低いサーバ
- データアップデート、システム監視、等のcronの様なジョブスケジューラが稼動するサーバ
- トレーニング等、教育用のサーバ
こんな様なシステムコンポーネントまでも簡単にクラウド化できる時代になっているのである。
AWSの提供するMicro Instancesは、613MBのメモリを搭載し、EBSストレージのみを提供する。Linuxに加え、Windowsを32ビット、64ビットの両環境で提供され、さらにCloudWatchというシステム監視サービスも提供され、負荷状況の把握ができる様になっている。価格体系は、On Demand(通上の価格)に加え、Reserved Instances(長期契約)、Spot Instances(オークション)も提供される。
価格は、Linuxが一時間あたり2セント、Windowsが一時間あたり3セント、と非常に安い。また、Linux版のReserved Instanceの価格帯は、さらに安く、年間契約の場合は 0.7セント/時間、とRackspaceを下回る、異常なまでの安さである。
価格戦略では相変わらず積極的な動きを見せるAmazonであるが、今回のように単なる値下げ戦略を取るのではなく、必ずターゲットがあった上での戦略である、という事を分析しながら今後のAmazonの戦略を見極める必要がある。
日本市場にAWSが登場する日は近いが、いよいよ事業を開始し、競合各社の動きを見据えながら、最初に誰をターゲットにするのか、非常に興味深いところである。AWSに対向するサービスを提供するIaaSベンダーとしては、どの様な価格戦略で対向すべきか、検討する必要があるが、今までのAmazonの値下げ戦略(過去に10回ほど実施)を参考にする事ができる、
と言える。