2010年9月8日水曜日

Swarm Computing:Intelの新しい戦略

Intelが先ごろ発表したMcAfee社の買収を通して、Intelが狙っている次世代のコンピューティング環境についての分析が様々なところで行われている。

Infoblox社のGreg Ness氏によると、Swarm Computingとい新しい市場の登場を提唱しており、今回のIntelのMcAfee社買収がこの新たな市場に対するアプローチである、と予測している。

Swarm Computingは、最近話題になっている、Ambient Computing、Pervasive Computing等といったキーワードと同様に、元々の源流をUbiquitous Computingに持つ。Ubiquitous Computingは、Xerox PARC研究所の当時Chief TechnologistであったMark Weiser氏が1980年代から1990年代にかけて提唱した言葉で、MITのOxygen Project、MEMSのSmart Matter Project、等、数多くの文献が登場し、一時期話題になった。基本的には、多くのコンピューティングデバイスに囲まれた状況の中で、人間がどの様にそれを利用するか、というコンセプトである。  

Intelがこの動きに向かおうとしている根拠は、Intelの製造するCPUの市場が従来のPC市場から、急激にネットワークデバイス(スマートフォン、タブレット、等)中心の時代に変遷している、という事である。

ネットワークデバイスの数は、既にコンピュータの数を超えている、と言われている。毎年増えるネットワークデバイスの数は、1999 年に存在してた全てのデバイスの数を超えている。これらのデバイスのCPUを製造するIntelとしては、この事実に注目しないはずが無い訳である。

すなわち、今日の「ネットワーク」、と呼ばれるものは、PCのネットワークではなく、もはややモバイルデバイスのネットワークである、ということである。

"More than 1 billion mobile devices will access the Internet in the New Year, research firm International Data Corp. (IDC: 33.83 +0.03 +0.09%) says. That's catching up to the 1.3 billion users that use a PC to go online, and the rate of growth for mobile users is 2.5 times the growth rate for PC use."
IDCの予測によると、来年頭には、10億台のモバイルデバイスが市場に存在し、オンライン接続しているPCの総数である13億台に迫る勢いである。モバイルデバイスの伸び率はPCの伸び率の2.5倍であり、逆転するのは時間の問題である。

これだけの数のネットワークデバイスが接続し、相互通信が行われる環境において、Intelの最大の関心は、セキュリティを如何にハードウェアアーキテクチャレベルで確保するか、ということである、 当然、ネットワーク上のアプリケーションやミドルウェアのレイヤーでセキュリティを確保する事も発想としてあるが、果たしてこれだけ分散化した環境で上位のソフトウェアが下位のハードウェア、ネットワーク機器環境通信プロトコルまでをカバーできるセキュリティを確保する事ができるのかどうか、という疑問が出てくる。  

Intelのコンセプトは、ハードウェア、それもCPUレベルのプロセス間通信のレイヤーで強固なセキュリティを確保してはじめて、上位レイヤーでのセキュリティ実装が可能になる、という考え方にあるのでは無いか、と類推する。

そのハードウェアレベルでのセキュリティプロトコルに関して、今回の買収で独占的な仕様を作り上げ、市場に一挙に投入することができるのであれば、非常に戦略的な買収である、
という事ができる。  AMD等はどういう動きを取るのか、非常に興味が湧くところである。

個人的には、クラウドコンピューティングの新たな時代に向けたアーキテクチャの登場、と解釈しようとしている。 VMWare等の仮想化技術をさらに超えた、真のUbiquitousクラウド、という感じだろうか?  スマートグリッド市場で大きく伸びている、AMI技術と非常に近いアプローチである、という事も非常に興味深い。  

http://www.scribd.com/doc/513024/Swarm-Computing