2010年9月2日木曜日

VMWareのキーノートスピートに象徴される、VMWareとMicrosoftの対抗状態

今週は、サンフランシスコを会場にVMWorldが開催され、仮想化技術を多数のベンダーの参加と共に、大勢がイベントを見にやってきている。

VMを新しいOSの登場と見たり、クラウドを支える基盤技術、と見たり、その位置づけは様々であるが、規模の大きいコンファレンスが昔のITバブル時期と比較して非常に少なくなってしまった今、こういったイベントの大きさに改めて感心してしまう。

イベント開催中は、仮想化技術、クラウド技術関連の発表が多く行われ、また、OracleやMicrosoft等の大手強豪企業などの反応も非常に興味深いものである。

イベントのスタートは、CEOのPaul Maritz氏の登場である。

VMWareの好調な成長に加え、新しい技術開発に伴う新製品の発表を行うなか、Mauritz氏の発言にはMicrosoftを相当意識した言動が多く、敵対視している訳では無いが、時代の変遷と共に、Microsoftが独占していたOS中心の時代の終焉が終わりに近づいている、という主張が多く目立った様である。

下記がその言動の一部である。

"The point is not that quote-unquote operating systems are going to disappear," Maritz said. "It's the point about where innovation is occurring. Traditional operating systems did two things. They coordinated the hardware and they provided services to applications. The innovation in how hardware is coordinated today and the innovation in how services are provided to applications is no longer happening inside the operating system."
OSが消えてなくなる、という事をいっている訳では無い。イノベーションがどこのレイヤーで行われているのか、というのが重要なポイントである。従来のOSは2つの機能をもっていた。一つはハードウェアを統合する事で、2つ目はそれをサービスという形でアプリケーションに提供して行った、という事である。 今日、この2つの機能の発展は、もはやOSのレイヤーでは行われていない、という事である。

Microsoft社は、このイベントと同期して、USA Todayという新聞に全面広告を出し、VMWareのライセンス事業は、Lock Inの戦略である、と指摘し、ユーザにVMWareの提供する3年間のライセンス契約を締結すべきでは無い、と主張している、VMWareユーザ向けのレター形式の広告を出した。

これに対して、Mauritz氏は、下記の様に述べている。
"First of all, I think it's a very sincere form of flattery the fact that Microsoft needs to take out a full page ad in a national newspaper for our customer event," Maritz said. "For Microsoft to talk about lock-in is a severe case of the pot calling the kettle black. I smiled when I saw that this morning."
まず、Microsoftがわざわざ全面広告を出す程、VMWareを評価してくれる事には基本的に感謝したい。 しかしながら、Microsoftが自分以外の会社に対して、Lock-In戦略の指摘をするのは甚だ矛盾する話である、と苦笑せざるを得ない。


"There really hasn't been a lot of innovation inside operating systems for 20 years now,"
OSの中、というもの、過去20年間、さしたる成長が合ったとは言えない。 Mauritz氏は10年前まではMicrosoftのWindows 95、Window 2000の開発責任者でもあったので、この発言は自分が寄与した分も含めて語っているのか、非常に興味深い。

Mauritz氏は、VMWareのCEOとして参画したのは2年前。 VMWareの親会社、EMCが自社の元創業者、Diane Greene氏を追放した時期に同期して、Mauritz氏を登用し、VMWareのCEOとして採用している。 Hyper-Vを開発したMicrosoft社からの競合関係が激しくなってきた時期の対策である事は良く知られている。

もう一つ、Mauritz氏がWindowsの衰退を主張する理由は、Windows以外のOSでのシステム(具体的にはApple製品)が多く登場し始めており、それに対向できていない、という点である。

VMWareの主張は、過去にMicrosoftが独占していたハードウェアの統合と、アプリケーションサービスの提供の役割を自社のソリューションで独占しよう、という戦略を明確に打ち出しており、最近の事業戦略、また今後の買収戦略等もこの方針に基づいて進められる、と想定される。

自社が進める、Project Horizonは、VMWareの仮想化技術と、パートナー企業の提供するサービスを組み合わせ、デスクトップでの市場の確保を狙っているものである。

また、今週の火曜日に発表した、Tricipher社の買収は、このインフラ上のシングルサインオンの機能を提供して行った、、セキュリティを高めるための具体的な動きである。

最後に:
"We long since ceased to be a hypervisor company. If you want a hypervisor for free we have one. A couple hundred thousand people a year download our hypervisor. We no longer make our money from the hypervisor. We make our money from data center automation."
もうすでにVMWareは、Hypervisorの会社ではもはや無い。Hypervisorは以前から無償で配布をしている。 年間、この無償のHypervisorは、数千万コピーダウンロードされているため、そこは全くもって収益源ではない。 我々は、データセンターの自動化を通して収益をあげる会社である。