今回は、High-Memory Double Extra Largeインスタンスと、High-Memory Quadruple Extra Largeインスタンスの2つのCPUサービスが対象で、19%の値下げを刊行している。
いづれも、大量のオンボードメモリを必要とするデータベースアプリケーションやmemcache等の用途で利用されるマシンイメージで、金融アプリ等、リアルタイム性の高いアプリケーションでの利用が促進される事が予測されている。
同社のブログで詳細が記述されている。
http://aws.typepad.com/aws/2010/09/amazon-ec2-price-reduction.html
この発表の中身の詳細はさて置いて、この値下げの発表はAmazonにとって、過去一年半の間で10回目に当たる、という点に注目したい。
下記がとあるサイトが調査した、値下げに関わる発表の内容を整理したもの。
- Reserve Instances: リザーブインスタンスの登場(CPUリソースをまとめ買いした時の割引制度)
- Lowered Reserve Instance Pricing: リザーブインスタンスの値下げ
- Lowered EC2 Pricing: EC2の価格帯を値下げ
- Lowered S3 and EU Windows Pricing: S3と、EU Windowsサービスの価格値下げ
- Spot Instances: スポットインスタンスの登場 (余剰CPUリソースをオークション形式で販売する制度)
- Lowered Data Transfer Pricing: データ転送価格の値下げ
- Combined Bandwidth Pricing: EC2, S3, RDS, SQSで使用する通信費を全部一括支払い
- Lowered CloudFront Pricing: CDNサービスの値下げ
- Free Tier and Increased SQS Limits: SQSの価格体系変更
- Lowered High Memory Instance Pricing: 今回の値下げ発表
値下げを行うサービスの種類、そしてその値下げの程度は、本業であるe-Retailing事業から引き継がれているDNAが大きく寄与している、と考えられる。当然ながら、その値下げの戦略は、ユーザ獲得を目的としているが、その上に特定の強豪相手をターゲットにしたビジネス戦略が織り込まれている、と考えるべきである。 また、値下げをする程度を見極めるためには、自社内のコストと売上の性格な把握、さらに短期、長期の売上予測がかなり内部で正確に、さらにシステマティックに行われている、と予測するべきである。
追随するクラウドプラットホームベンダーとしては、AWSと競合する/しないは別として、この辺のノウハウの構築、「サービス事業+ユーティリティコンピューティング事業」という点から今後のビジネスモデルとし整備していく必要のある機能ではないか、と強く感じるところである。
市場のニーズに押されてクラウドサービスを始めたはいいけど、どうも事業収益に繋がるのかどうか、よく見えない、という不安をもったままReactiveに市場参入するのはできることなら避けたいところではある。
上記の記事を掲載したサイトは、さらにAmazon Web Serviceの発表している、技術的な機能拡張に関するアナウンスも統計をとっており、次の表にまとめている。
見ての通り、価格戦略だけではなく、機能の拡張についてもかなり積極的に行っている、という事が見える。 市場のリーダー格の地位を維持するためにはこの面での努力も非常に重要視している、という事がわかる。 この点に於いても、IaaSベンダーとしては重要視すべきで、クラウドプラットホーム事業は常にイノベートし続けるビジネスモデルであること、さらに他社が実施していない、ニッチな市場セグメントを常に開拓し続ける必要がある、という事を認識するべきであると思われる。
IaaSをユーティリティコンピューティングと呼ぶことが多いが、「ユーティリティ」という言葉がもつ、ゆったりと構えたイメージとは裏腹に、上記のような激しい攻略が展開されている厳しい競争の市場である、という事を改めて認識する記事である。
http://feedproxy.google.com/~r/neoTactics/~3/waLuvzP56GI/aws-price-reduction