アメリカ陸軍は、140万人のユーザ、IT予算約$100億ドル、という規模を持ち、世界最大級のユーザである。 現在、自省内のデータセンターの統合化が重要課題としてあげられており、現在運用している200箇所の拠点を削減する方向で2012年から具体的に作業を開始する、と表明している。同時にクラウドコンピューティングの導入は積極的に行う方針も明らかにしており、オバマ大統領の推進する計画に沿った方針を示している。
次の様な戦略を明らかにしている
(1) データセンター集約
当面は、Fort Belvoir (Virginia) と U.S. Army Forces Command (Georgia) の2つのデータセンターを Redstone Arsenal (Alabama) と Fort Bragg (N.C)に移転し、集約する事を明らかにしている。
(2) 仮想化の導入とアプリケーションの集約化
Army Material Commandと呼ばれる省内の各ユニットにアプリケーションを提供するシステムに登録されるアプリの数を、200から90に大幅削減する計画を既に開始。
(3) プライベートクラウドの導入
陸軍が非常に興味をもっている分野である。既存のアプリの中で、emailやヘルプデスク等を順次クラウド化する、と表明している。
(4) DISA (Defense Information Systems Agency)(国防省のITサービス組織)の活用
DISAは既にクラウド関連のサービスを米国政府関連省庁に対して提供しており、その中で、陸軍はDefense Connectと呼ばれるコラボレーションソフトウェアを利用している。また、Rapid Access Computing EnvironmentやForge.comといったアプリケーションの開発している環境のクラウドサービス等も既に利用している。
(5) Salesforce.comの利用
既に、陸軍はリクルート活動にSalesforce.comを利用しているが、総論としてはパブリッククラウドを利用する事には消極的である、とも表明している。セキュリティに問題がある、という指摘である。
アメリカのIT業界は、中央政府が採用した技術が順次、州政府、民間市場に広がって行く、というパターンを歴史的にたどっており、クラウドの導入がどのように政府機関の中で図られて行くのか、市場が大きな興味をもっているもって注目している。 特にクラウドに関しては、セキュリティという問題が常に大きな導入障壁として議論されており、国防省のをはじめとしたセキュリティを最重視する部門がどの様にしてこの問題に対処するのかが特に関心を集めている。従って、上記の陸軍のクラウドに対するスタンスは今後市場でのクラウド技術の位置づけにも英鏡を与えるものとして評価すべきである。