2010年6月5日土曜日

アメリカ国防省のクラウド戦略:セキュリティの懸念に対応しながら積極的に推進

アメリカ政府全体が政府主導のCIOであるVivek Kundra氏主導の元、クラウドの導入がかなり積極的に進められている中、意外と国防省(Department Of Defense)が最も積極的にクラウド導入を行っている、という事実はあまり知られていない。

DoDは既に下記のプロジェクトを開始している。

◦ Army(陸軍)のEnterprise Messaging and Collaboration Services (EMCS)プログラム:
軍部全体の人員に賦与されるeメールをアドレスを統一管理するシステム。

"The ultimate end state of the Army EMCS is to provide operational forces with the ability to access e-mail from any terminal attached to a DOD network in any operational environment," Herman Wells, enterprise services chief for the Army's 7th Signal Command, wrote in a concept-of-operations document released March 3. "Forces can easily discover the contact information for, and exchange messages with, anyone in the DOD enterprise."

陸軍は非常に大きな組織である上、複雑な組織間の通信の効率向上にクラウド化が大きく寄与する、という期待がある。最終的に、2012年までには249,000人をサポートできるシステムにする予定。

◦ DISA(Defense Information Systems Agency)のRACE(Rapid Access Computing Environment)
DISAの運営するデータセンタにおいて、RACEと呼ばれるサーバ仮想化環境があり、Amazon Web Servicesに近いもの。主としてDoD内のユーザを対象としたプライベートクラウドサービスを提供しいる。
現在、この環境の上で2つの大きなSaaSプロジェクトを運用している。一つは、Forge.mlと呼ばれる、オープンソフトをベースとして開発環境で、CollabNet社のツールを採用している。現在、4,000人のユーザと、170個の開発プロジェクトをサポートしている。 二つ目は、ProjectForge.mlと呼ばれるもので、オープンソフトで無い開発プロジェクトプロジェクトを支える開発環境である。

◦ Navy(海軍)のNMCI(Navy Marine Corp Intranet)のクラウド化
同組織内が既存のイントラネットをクラウド化する狙いがあり、eメールをや、コラボレーションツール等のSaaSアプリケーションの採用を検討している。

◦ Space and Naval Warfare Systems Command
この組織Navyの一部であり、遠隔地の船上から海軍が運営するクラウドのネットワークに相互接続する実証試験を行っており、海軍が進めているTrident Warrior '10プロジェクトの一環として重要視している。

◦ Air Force(空軍)
今年の2月、IBMに対して10ヶ月のSIプロジェクトを発注し、空軍の国防やインテリジェンス関連のネットワークのクラウド環境の構築を共同で開発している。空軍の要求する厳しいセキュリティ要件を達成しつつ、クラウド環境の強みである、リアルタイム情報のアクセスと高いシステム信頼性を達成する事が大きな課題である。

"In this environment, the cloud will need to prove that it is capable of hosting a critical, live mission," McQueeney said. "So high availability, high assurance and real-time monitoring of data flow are examples of key capabilities" that the Air Force is seeking to demonstrate in IBM's lab in Bethesda, Md.



これらのDoDの要件に対して、IBMやCiscoなどの大手IT企業に加え、データセンタ事業者、ホスティング業者が様々なソリューションを提供しようと試みている。  共通している要件は、次の様な点である。
1) 提案するクラウドソリューションのスケーラビリティ(拡張性)
DoDの要求するクラウド環境は、導入後から急速な成長をし 、数年の間に4、5倍の大きさに成長する可能性があり、この要求に十分に対応できるインフラが必須
2) クラウド間の接続性
既に複数のクラウドが存在し、さらに増える傾向にある状況の中、クラウド間の接続性には大きな関心がある。標準化が検討されている一方で、既に導入されているものとの連携も重要になる。
3)セキュリティ
DoDはもっとも要求の厳しい組織の一つであり、要件を分析すると、ハードウェアも含めたセキュリティソリューションがどうしても必要になってくる、と考えられる。CiscoのUCSや、IBMのBlueCloud ソリューション等がそれを狙った動きである、と言える。

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