OpenCoreをビジネスとしているベンダーとしては、何を無償で提供して、何を有償化するのか、というのは非常に重要な事業判断となる。オープンソースのライセンス条件(無償配布)を満足すると同時に、事業収益も確保する必要があるからである。 コンセプトとしては、開発者コミュニティに対しては無償でコードを提供して、必要な機能を自由に開発で器量な環境を整える事と、一方では一般ユーザに対してはすぐに利用できる広範囲な機能セットを有償で提供する、という2つのビジネスモデルを提供する事ができる一般的に受け入れられている様である。
一見、簡単に見えるようであるが、境界線で難しい問題が発生する可能性があり、Sugar CRMの事例がよくその事例としてあげられる。Sugar CRMの問題は、自社が発表したSugar 6という最新のバージョンが、オープンソフトウェアベースでありながら、有償で提供されている一方、それと全く同じGUIをサポートしたSplendidCRMという製品がオープンソフトウェアとして無償で提供されている、という事である。まだ業界内でコンセンサスが得られていない時点で結論を出す事は出来ないが、この問題はオープンソフトウェアの位置づけと、OpenCoreと呼ばれるソフトウェアの無償・有償の切り分けの考え方にも大きく関係してくる。
NASAがEucalyptus社のクラウドソフトウェアを利用していく中で、同様な問題にぶつかっていた、という事が明らかになってきている。
NASAは、Eucalyptusをベースに、演算エンジンとファブリックコントローラを呼ばれる機能をNovaという機能セットとして独自開発した際に、オープンソフトウェアとして公開しようとした際に、Eucalyptus社のOpenCoreのビジネスモデルに反した為、NASAはEucalyptus社と決別し、Apache 2.0のライセンスに基づいて公開する決断をしたのが結論。この過程において、Rackspaceが登場し、自社のOpenStack戦略の一環としてNovaを配布する事をNASAとの間で取り付けた、というのが現時点で理解されている経緯。
Eucalyptus社は、OpenCoreコンセプトを明確に打ち出しているベンダーの代表。自社の無償版とEnterpriseバージョンと呼ばれる有償版との間で明確な境界線を引き、上記に説明している様な2つのビジネスモデル、2つの顧客層をカバーしようとする戦略を打ち出している。
ところが、このモデルの内在する問題点を、自社の顧客に指摘され、尚且つ競合に移行されるきっかけの要因になってしまったのは、以下にも皮肉である、と言える。
http://bits.blogs.nytimes.com/2010/07/20/the-recipe-for-clouds-goes-open-source/
http://www.zdnet.com/blog/open-source/how-open-core-runs-afoul-of-the-paid-free-boundary/6887