2010年7月26日月曜日

OracleがIaaS事業を開始するという噂:同社のクラウド事業はどう展開されるか、ヒントが隠されている

Oracleはクラウド事業を行っていない数少ない大手IT企業の一つとされているが、実は2008年に発表されたAmazon Web Service上でのDatabase 11g,Fusion Middleware、Enterprise Manager等のサービス提供をはじめ、密かに顧客に対してクラウドサービスを提供しているのが現状である。 あまり明確に戦略を打ち出してこなかったのは、CEO のLarry Elllison氏がクラウドビジネスというものを、否定はせずともその用語の乱用に対して非常に厳しい意見を持っていた事が要因である、と言える。

これが、最近になって、どうも本格的なクラウド事業戦略を打ち出すのではないか、という噂が広がり始めている。

そのきっかけとなっているのは、数週間前に同社がOracle Technology Network(OTA)というサイト上で発行した、Cloud Resource Model APIという仕様書である。この仕様書のバージョンは、1.0/0.34と打たれており、同社のIaaSのAPIモデルに関するかなり具体的な情報を記載している、との事。文面をそのまま記載すると、下記の通り。

The Oracle Cloud API defines an Application Programming Interface (API) to consumers of IaaS clouds based on Oracle's solution stack.

このOracle Solutions StackというのはXenベースのVM サーバインフラを指す。また、このドキュメントはOracle Cloud Computing Platform というものについても情報を加えている。上記のAPI仕様は、下記の通りような機能を提供する、と説明されている。

  • サービスの論理ユニットの定義とメタデータを含むテンプレートを参照する機能
  • このテンプレートをクラウド環境上に移行し、オンデマンドのITトポロジーを形成する機能
  • リソース上のオペレーション(例えばONLINE、OFFLINE等)を行う機能
  • リソースのバックアップ機能

このドキュメントによると、vDCオブジェクトはVMの集合体であり、またゾーンと呼ばれるものは上記のリソースが配置される論理的な領域を指す。

原文は下記の通り:

ゾーンは、リソースが配備される論理的な領域を指す。例えば、ゾーンはヨーロッパ、北米、東アジア、等、地理的な領域を指す場合もある。さらにゾーンは企業内の組織構造に沿ったものである場合もある。例えば、財務部門ゾーン、テストゾーン、開発ゾーン、等。

ゾーンは、それぞれが稼働する物理的なインフラとは全く別に定義される。例えば、ゾーンAとゾーンBは同じハードウェア上での動く事もあるかもしれない。

OracleCloudResourceModelAPI_DesignDiagram.png

このドキュメントはさらに、このIaaSクラウドモデルは標準のOVFパッケージフォーマットをサポートする、と明記されている。

さらに興味深い事に、このAPIは、DMTF(Distributed Management Task Force)に提示されており、VMWareのvCloud APIや、RackspaceのOpenStackと同じ様に公開される、との事。

このドキュメントの責任者の一人である、Oracleの'Architect for the application and middleware management part of Oracle Enterprise Manager'のWIlliam Vambenepe氏によると、このDMTFに提示されたAPIは、OracleのCloud Resource Model API のほんの一部でしかない、と述べている。

IaaSは、単純なクラウドを構築するモデルだけでは無い。ロードバランス、プライベートデータセンターとの間のセキュアなデータ通信の確保、Low Latencyを保証するサブネットワーク、マルチTierアプリケーションを異なるセキュリティゾーンにマッピング出来る機能、等、非常に重要な要件が多い。  市場に出回っているクラウドモデルでこれ等を一部サポートしているもんがあるが、大きな問題はこの辺の付加価値部分はまだIaaSとして標準化するには時期尚早である。

さらに、IaaSのAPIをよりアプリケーションに最適化するための拡張機能もいっぱいある。vCloud のvApp等がその例であるが、まだまだ少ない。市場において、これらの拡張機能がどの様に使われるのかがまだ明確なコンセンサスが無い状態で標準化を強要するのは、やはり無理が生じる原因となる。

この辺のコメントを見ていると、やはりOracleもOpenStackに対して非常に警戒していると共に、独自の標準化戦略をもって対抗する戦略を取る方針を取っている、という風に受け取れる。

OracleのDNAは決してクラウド事業にある、とは思えない。それは、同社の元来のソフトウェアライセンス事業がクラウドの浸透と共に非常に大きな影響を受ける事が想定されるからである。ある意味では、Microsoft社と同じ様に、既存の収益モデルへの影響を最小限に留めつつ、顧客のクラウドサービスニーズを満足させるか、が課題になっている、という事である。

基本的に、Oracleのクラウドモデルは、自社の基盤事業の延長戦上に乗るもの、と解釈するのが正しい、と認識すべきである。当然プライベートクラウドを主軸としたソリューションになる事が想定されるし、主要パブリッククラウドである、AmazonやAzure、Google等との無条件での互換性を提供する理由があるとは思えない。上記の様に、一部はオープン仕様は公開しながらも、キーポイントは独自仕様として自社の収益、さらに顧客の囲い込みのために位置付ける、戦略的な事業を展開するもの、と想定される。 具体的にどのように展開していくかは、今後注意深く観察する必要がある。